| ※このお話は、ほんのちょっぴりですがリバ(つまり83)要素が見られる箇所が御座います。 どうしても苦手な方は回避することをお奨め致します。内容に関する苦情はご遠慮願います。 ※このお話の前提となるssが本家様宅にございます。未読でも問題ないと思われますが、気になる方は先にご覧下さい。→「雪裏に咲く」(新規頁開きます) ※メッセージをご理解いただけた方は下方へスクロールして下さい。 夕方から吹雪き始めた晩、八戒は森の家でひとり、本を読みつつコーヒーを飲んでいた。窓の外では風が轟々と吹き荒れる。風を受けた屋根や柱はガタピシと音を立てながら暴風雪に耐えている。 昼過ぎにでかけていった悟浄はまだ帰ってきていない。いや、こうも吹雪けば帰ってこれないだろう。ただの雨なら傘を持って迎えに行く甲斐もあろうが、この天候では傘など物の役に立つまい。それに、いつもの賭場にでも泊めてもらえばいいのだから心配する必要もない。 八戒は本のページをめくり、くすりと笑った。本が面白かったからではない。悟浄が前に吹雪のせいで賭場に泊まって朝帰りしたときのことを思い出したからである。彼は疲労困憊し、帰り着くなりベッドに倒れ込んだ。心配して訳を聞くと、なんと女性をベッドで満足させるのに手こずり、一睡もせずに奮闘していたのだという。 『ちなみに女性は何人だったんですか?』 『ひとりに決まってんだろ。・・・・あの女、化けモンだぜ』 からかわれても、悟浄には閉じた目を開ける元気もなかった。こんな有様では、悟浄がドン・ファンと化すのは到底無理だろう。ふと「そう言うお前はどーなのよ」とやり返す声が聞こえた気がして、八戒は微笑んだまま肩を竦めた。土台無理な話である。そもそもドン・ファンどころか――との考えが胸をよぎったとき、八戒の表情から笑みが消えた。カップを持つ自分の手が、一瞬、赤く染まって見え、八戒は身震いした。血塗れの手で抱いて良い相手などいるものか。 八戒は頭を振って、本に神経を集中させることにした。上手くいかないのは分かり切っていたが、底なしの陰鬱さに自ら嵌るのもみっともない。 どうにかキリの良い所まで読み進め、そろそろ風呂に入って休もうかと立ち上がったそのときである。何かがドアにどさりとぶつかった。風の悪戯だろうか。そう思った瞬間、意志を以てドアを叩く音が明瞭に聞こえてきた。これは風ではない。人だ。八戒が急いでドアを開けると、ドアにもたれていた人物が室内に倒れ込んできた。八戒は咄嗟にその人物を抱きとめ、目を見開いた。 「三蔵!」 見間違えるはずもない。白い法衣に肩にかけた経文、笠から覗く金色の髪。三蔵法師その人だ。 「・・・・とりあえず・・・死んじゃ・・・・いねえよ」 軽口を叩く余裕はあるようだが、この吹雪の中を歩いてきたとなれば、身体がすっかり冷えているはずだ。とにかく温めなければいけない。八戒はドアを閉め、三蔵から笠を取って法衣についた雪を簡単に落とすと、彼を温かい台所まで運んだ。 「三蔵、自分で脱げますか?」 三蔵は頷き、震えながら法衣に手をかけた。こういう場合、雪や汗で湿っているであろう衣服は全て脱がなければならない。その上で乾いた衣服に着替えなければ。そのあたりは三蔵も理解しているようだ。 「タオルと寝間着を取ってきます」 八戒は自室に飛び込み、必要なものを掴んで戻った。見ると、三蔵はガタガタ震え、手の自由がきかない状態らしく、肩の経文を巻いて脇に置くのが精一杯のようである。 「すみません、失礼します」 待っていられるはずもない。八戒は三蔵の法衣を脱がしにかかった。三蔵は力が出ないのか面倒なのか、されるがままになっている。八戒はできるだけ急いで三蔵から衣類を取り去ると、大きなタオルでくるむようにして三蔵の身体を拭き、それから素肌の上から寝間着を着せた。笠のおかげで頭がほとんど濡れておらず、ひと手間省けたことを確認し、八戒は三蔵に肩をかして自室に入った。三蔵の身体の震えは依然として酷い。とはいえ、震えがあるならまだましである。 「とりあえず温まりましょう」 八戒は三蔵をベッドの上に座らせると、自身も三蔵を背中から抱きかかえるように座り込み、毛布を二枚使って三蔵と自分自身をくるんだ。こうしていればそのうち身体は冷えから脱却するだろう。八戒は三蔵の身体に腕を回し、両脇に手のひらを当てた。身体の中心からじっくり温めるのが良いと何処かで読んだ覚えがあった。 「苦しかったら言ってください」 焦るあまりについ腕に力を込めすぎたのでは意味がない。三蔵は震えながらも、フッと笑ったようだっだ。何がおかしいのか分からなかったが、八戒は特に尋ねることはせず、さしあたり三蔵の身体を温めることに集中した。 しばらくすると三蔵の身体の震えは止まった。ほっとして気が緩んだせいだろうか、八戒は三蔵の身体が思ったよりも華奢であることを初めて意識した。筋肉質で無駄なく引き締まっているのだが、それにしても細い。三蔵法師の任務がこうした削ぎ落とされたような肉体を作るのだろうか。こんな吹雪の中を移動して命を危険に晒す任務など課す方が悪いとしか八戒には思えなかった。 「三蔵、何か食べませんか。貴方の身体には燃料が必要ですから」 「・・・・・・・面倒くせえ」 その答えが如何にも三蔵らしい。八戒はくすりと笑いつつ、腕を解いた。一瞬、腕を押さえられたような気がしたが、気のせいかと思えるほどの間であった。 「貴方はそのまま毛布にくるまって来てください」 三蔵のためにスリッパをだし、八戒は一足先に台所に入った。悟浄が帰ってきたら食べさせようと思っていたスープがある。八戒がスープを温めて皿に盛る頃には、三蔵は台所の卓についていた。仏頂面で毛布にくるまった姿を見ると、年齢相応の若者にしか見えない。 「さあ、どうぞ」 面倒くさがったわりには三蔵はスープをあっという間に平らげ、おかわりまでした。 「・・・・・うまかった」 「お粗末様でした」 傲岸不遜が服を着て歩いているような最高僧が礼を言っている。それが八戒を聊かくすぐったい気持ちにさせた。 「お風呂は朝にゆっくり入ることにして、もう寝ちゃいましょうか」 二人はざっと顔を洗い、歯を磨いて床に就くことにした。二人とも何も言わなかったが、当然のように同じベッドに入った。他の選択肢を少なくとも八戒は思いつかなかった。三蔵を温めなくてはならない。八戒は他に何を考えることなく三蔵のために腕を広げ、三蔵も三蔵で八戒の腕の中に自ら入って目を閉じた。 ふと目が覚めて、三蔵は自分が何処にいるか分からなくなり、暗闇の中で目を眇めた。妙に温かい。というより暑い。いやむしろ熱い。そこで、自分の身体に誰かの腕が回されていることに気付き、三蔵はハッと身を竦めた。なぜこんな無防備な状態でいるのか。 「・・・・・・さんぞう?」 眠気の勝った声が聞こえ、三蔵の身体から力が抜けた。そうだった、ここは八戒と悟浄が住む家だ。ただし今晩、河童はいないようだが。ともあれ、経文を探して遠方の山に登り、そして空しく帰る途中、危うく凍死しかけたところで、この家に辿り着いたのだった。 「なんでも・・・ねえよ・・・ッ」 起こして悪かった、と続けようとしたのだが、声が喉に引っ掛かってしまった。身体が熱くてたまらない。背中に這わされた八戒の手のひらから熱が雪崩れ込んできている。 「なんでもないって声じゃないでしょう」 八戒は本格的に目を覚ましたらしく、腕に力が込められた。そのせいで余計に熱が体内に注入されることになり、三蔵は荒い息を吐いた。息が苦しい。腕だけではなく、八戒の身体に触れている部分がすべてから熱が注ぎこまれているようだ。勃ちあがっている部分は脈を打って自己主張している。痛みさえ覚え、三蔵は顔を顰めた。 「熱があるんじゃないですか?」 「・・・・いや、これは・・・ッ」 三蔵は悶え、喘いだ。すると、八戒は三蔵の身体の状態に気付いたとみえ、息を呑んだ。 「お前の・・・・気が・・・・・身体に入って・・・・ッ」 とにかく離れろと身体を押しやると、八戒は慌てたように手を放した。少し息が楽になり、三蔵は溜息を吐いた、つもりだったが、依然としてそれは喘ぎ声にしか聞こえなかった。 「八戒、お前・・・・気が使えるのか」 肩で息をしながら三蔵が問えば、八戒は戸惑った声を上げた。 「いえ、そういう自覚はありませんでしたけど・・・・でも、今、貴方に対して使ってたんですよね、僕が」 察しが良すぎるのも考え物だ、と三蔵は内心独りごちた。八戒はすべて自分のせいだと思っているのだろうか。確かに、注ぎこまれた熱は三蔵の体内で噴出先を求めて駆け巡っており、下半身を疼かせている。その点に関して言えば八戒に責任があるのだろうが、夜間に局部が反応した状態になること自体はごく普通の話だ。今は放出の欲求が妙に濃いと言えば濃いが、それだけのことだろう。 「あの、僕、悟浄の部屋で寝ますから。・・・・その、ティ、ティッシュは枕元にありますし・・・」 顔を見なくても八戒が狼狽して赤面していることは火を見るより明らかだった。八戒は身を起こしてベッドから降りようとしたが、三蔵は咄嗟に腕を掴んで引き止めた。何を慌てているのか、おかしな奴だ。男である以上、眠れば勃起することくらい知っているだろうに。先ほど触れていた感触からして、八戒のそれも三蔵のと似た状態にあるはずだ。 室内は暗く、八戒には見えていなかったが、三蔵の唇の端は僅かに上を向いていた。 「珍しいモンじゃ・・・ねえだろ」 からかうように言い、寒いぞと腕を引くと、八戒は大人しくまた毛布にもぐりこんできた。 「そりゃそうですけど、でも、ほら、わざわざ他人に見せたいものでもないでしょう?」 八戒は、三蔵に接触しないよう身を縮めている。 「まして僕のせいでそんな・・・」 自分のせいで三蔵が欲求を覚えたのが耐えられないとでも言いたいのだろうか。実の姉と寝ていた男の台詞としては随分と初心なものだ。それとも女の反応には慣れていても、男のそれを間近で見たことがあまりないのだろうか。孤児院でも大学院でも集団生活だったろうに。こんなもの、寺という男ばかりの環境しか知らない三蔵にしてみればいつものことだ。放っておけばすぐに収束する。普通はそうだ。そのはずなのだが。 「・・・・下らねえ」 吐き捨てる声に熱がこもる。収まりのつかない身体に、次第に三蔵は苛々してきた。 「下らないって、一応戒律に入ってるじゃないですか。・・・・お酒みたいに形骸化してるかもしれませんけど」 形骸化しているところまで含めてその通りだ。不犯には様々な解釈が施され、抜け道だらけになっている。三蔵も子供のころからそういう対象として見られることがしばしばあり、不愉快な思いをしてきた。おかげで、他人の手がその意図を以て肌に触れてくるとゾッとするまでになった。なのに今は。 三蔵は大きく息を吐いて体内の熱を逃がそうとした。しかし、うまく行かない。隣に横たわる察しの良い男は、暗くてよく見えないはずの三蔵の様子を伺い、心配そうに声を潜めた。 「・・・・三蔵、まだ苦しいんじゃないですか? やっぱり僕・・・」 皆まで言わずに八戒は身を起こしてベッドから出ようとする。それが三蔵には許せなかった。逃げるのかという、やや理不尽な怒りとともに、三蔵はまた八戒の腕を掴むと今度はベッドに引きずり倒した。掴む手に先ほどよりも力が入っていると八戒の呻き声で気づいたが、力を緩めることができない。 「三蔵ッ、僕と接触したらまた変な気が入りかねませんから!」 抗議に耳を貸さない三蔵に、八戒は本格的に慌てていた。 「だいたい僕みたいな咎人の汚れ・・・」 自分でも失言だと思ったのだろう、八戒はハッと口を噤んだが、いったん口から出た言葉は取り消せるものではない。 「汚れ者同士と言ったのは・・・・お前だぞ、八戒」 三蔵は怒りにまかせて八戒の上に乗り上げ、彼を組み敷いた。しかし、それ以上は力がもたず、八戒の胸に崩れ落ちた。 「俺を汚してみろ・・・・・そうしたら・・・・・・それ以上に・・・俺がお前を汚してやる」 喘ぐように言うと、三蔵の下にある身体に震えが走った。下肢の間にあるものが布越しに擦れ合い、熱を互いに高めていく。そうだ、それでいい、と三蔵が独りごちたところで、ぐるりと身体が反転した。今度は八戒が三蔵の上に馬乗りになっていた。互いの姿がシルエットにしか見えない闇の中、八戒の指が三蔵の寝間着のボタンを手探りで外していく。 「・・・・・俺だけ脱がすなよ」 そう言うと、八戒は笑ったようだった。 「注文が多いですねえ」 三蔵は、煩せえよ、と毒づき、腰を押し付けるように動かした。すると八戒の手の動きが一瞬止まり、同時に笑みの気配も消えた。 「・・・・早く来い」 焦れた声に応える言葉はなく、ただ手の動きが性急になった。その後、着ている物を自ら脱ぎ捨てた八戒の裸身が僅かに白く見えた記憶を最後に、三蔵は官能の渦に巻き込まれた。肌の温もりと滑らかさに眩暈を覚え、這わされる舌に身を捩らせ、差し出された物を喉の奥深くまで銜え込んだ、ような気がする。 次に気が付いたとき、三蔵は再び寝間着を着てベッドに横たわっていた。すでに日が昇っているらしく、隣で寝ている八戒の紐の解けたような顔が良く見える。一瞬、何もかも夢だったかと思ったが、妙な気怠さと腰のあたりの軽さが、あれが現実だったと示しているように思えた。 三蔵が寝起きのぼんやりした頭で八戒の寝顔を眺めていると、やがて瞼がゆっくりと持ち上げられ、透き通る緑の瞳が現れた。片方は偽物だが、わりによくできている。そんなことを考えるともなしに考えているうちに、緑の目の焦点が三蔵にあった。その途端、八戒は弾かれたように身を起こした。 「お、おはようございます!・・・・ぐっ、具合は、ど、どうですか?」 この慌てぶりからするに、やはり夢ではなかったようだ。三蔵は意地悪く口の端を吊り上げた。 「悪くねえな。・・・・・お前、男と寝たのは初めてか」 八戒の頬が朱に染まる。 「そ、そりゃそうでしょ」 「俺もだ」 三蔵が言うと、失敬千万にも、八戒は、え、と聞き返した上に目を丸くした。 「何だ、悪いか」 わざとらしく眉間に皺を寄せれば、八戒は頬を染めたまま勢いよく首を横に振った。 「と、とんでもない・・・っ」 八戒は目を白黒させている。昨晩も思ったが、八戒の慌てる様子は意外に面白い。普段の取り澄ました仮面のような笑顔よりよほどマシに思える。 三蔵は腕を伸ばして、八戒の頬に触れた。熱い、と思ったその瞬間、三蔵は真顔に戻った。 「気を練れるよう訓練しておけ。・・・・何なら誰か紹介するよう取り計らう」 頬に触れていた指を三蔵は握り込んだ。指先に熱がこもる。 「誰彼かまわず、ああいうことをされちゃ敵わねえからな」 三蔵が再び口の端を吊り上げると、八戒は耳まで赤くなり、目を泳がせた。 「八戒、なあ八戒ったら!」 大声をあげられて、八戒はパチパチと目を瞬かせた。目の前には悟空の怪訝そうな顔がある。 「・・・あ、すみません。ぼうっとしてて」 八戒は頭を振った。どうもいけない。三蔵は所用で不在だというのに執務室にその気配が濃厚に残っているせいか、ついあらぬことを思い出してしまう。 「ちょっと頭を冷やしてきます」 八戒は、悟空の「大丈夫?」という声に、ええまあ何とか、と適当な返事をしつつ、執務室の窓から外へひらりと飛び降りた。積もった雪の上を踏みしめて歩くと足の下でサクサクと音が鳴る。 あれから、三蔵に紹介された気功師に気を練る訓練方法を教わりにいった。気功師は八戒の天賦の才に驚き、専門家にならないかと誘ってくれたが、丁重にお断りした。三蔵相手にやってしまったことを思うと、他人の肌に触れるような職に就くのは憚られた。 八戒の気は、少しずつコントロール可能になってきている。しかし、まだ自信が持てない。血に塗れた手で人の肌に触れられないなどと呑気なことを考えている場合ではなかった。考えもなく人をその気にさせる手など、迷惑以外の何ものでもない。 八戒は大木にもたれ、雪を眺めて顔を顰めた。冷たい空気にしばらく身をさらせば、寺に似つかわしくない妄念も引っ込むだろうと思ったのだが、駄目かもしれない。白い雪を見ただけで、三蔵の肌を思い出してしまう。明け方にみたそれは、傷跡が多かったとはいえ、白く透き通っていた。八戒は頭を振り、諦めの溜息を吐いた。当分、あるいは一生、あの肌の残像から逃れられないのだろう。 あの夜、八戒の気に中てられて、三蔵は驚くほど乱れ続けた。普段見せるストイックな顔とは対極にある姿に、八戒自身も中てられた。一物に指を絡めれば彼は身を捩り、肌に舌を這わせればあたり憚ることなくよがった。それだけでなく、三蔵は八戒の得物を銜えると、汚してみろとの挑発を実行したつもりなのか、八戒から精を搾り取るまで責め続けた。万事そんな調子だったため、てっきり男同士の交歓に慣れていると思いきや、あれが初めてだったという。信じがたい話だが、嘘を言っても三蔵に何の益もないのだから、きっと本当なのだろう。 どちらがどちらを抱いたのかもよく分からない、互いを食い合うような交わりだった。八戒も一度ならず達したが、三蔵はそれ以上に何度も吐精していた。後の方になるともはや何も出ず、ただ身体を痙攣させていただけだったような気もする。終わりを迎える頃には薄明るくなった室内で、快楽に酔って閉じられた瞼が桜色に染まっていた。眉根は悩ましげに寄せられ、八戒が刺激を与えるたびに掠れた喘ぎ声が半開きの唇から洩れた。八戒も朦朧としながらも勢いがついて止まらなくなっており、白い肌を唇でなぞり、口づけて咥内を荒し、三蔵自身に執拗な愛撫を施した。やがて三蔵は最後の絶頂を迎えると、失神するように眠りに落ちていった。 汗や放出したもので文字通り汚れた三蔵と自身を見やり、我に返った八戒は青くなるばかりであった。硬く絞ったタオルで三蔵の身体をきれいに拭って寝間着を着せ直すと、八戒は自分の身体も拭い、墜落するように眠りについた。 三蔵が帰って行った後、ベッドに座り込んで何が起きたか反芻し、八戒は思わず両手で顔を覆った。何よりも、花喃以外の存在に情欲を覚えたことは大きなショックであった。彼女がどんどん遠くなっていくのを、なすすべもなく見送っているような気分になり、八戒は自分の薄情さに項垂れた。 加えて、欲望に負けて三蔵と寝てしまったことも八戒に打撃を与えていた。何ということをしたのか、何ということをさせたのか。三蔵の挑発に乗るにも限度がある。いくら戒律破りを気にしない規格外の最高僧だからといって、これまで守ってきたものまで破らせることはなかったのではないか。しかもあんな形で。八戒が気を妙な形で入れさえしなければ、三蔵は淫らにねだるような真似をせずにすんだろうに。いつもの峻厳さと桜色に染まった瞼の対比を思うと、八戒の良心は疼いた。 しかし、同時に体内に別の疼きを覚えてもいた。あの夜以来、俺を汚してみろ――との言葉がぐるぐると八戒の頭の中を巡っている。人生でただ一つと思い定めた愛を失ったばかりだというのに、身体を重ねた悦びが八戒の中に深く根を張りだしていた。あれは肉欲だけのことだと誤魔化すこともできなかった。 ああやって汚して、汚されて、その先に何かあるのだろうか。あって欲しいと願うのだろうか。いや、その先があろうとなかろうと結論は同じなのではないか。しかも、薄情極まりないことに、八戒の道は最初から一本だけだったようにさえ思える。 八戒は天を仰いだ。木の枝を透かして、どんよりとした冬曇りの空が見える。また雪が降りそうだ。このまま考えていても埒が明かない。八戒は悟空の待つ執務室へ戻ることにした。 「八戒、平気?」 気遣わしげに大きな瞳を見開いて、悟空は八戒を迎えた。悟空に心配をかけるのはよくない。八戒は強いて笑顔を作り、大丈夫ですよ、と答えた。腹に力を入れるしかない。八戒は気合で残りの勉強時間を乗り切ることにした。窓に視線を向ければ、すでに雪が降り始めていた。 しばらくして本日分の算数とおやつを終え、そろそろ帰ろうかと八戒が支度し始めたとき、雪まみれの三蔵が戻ってきた。前回よりはマシな状態のようだが、いずれにしても冷え切った姿である。三蔵はガタガタ震えているくせに、彼の身を案じて追ってきた僧侶たちを煩いと怒鳴りつけて追い払い、執務室の扉を力任せに閉めた。 「悟空、タオルと毛布を何枚か、それと新しい服を取ってきてください」 「わかった」 悟空は間髪を入れず駆け出していく。三蔵は執務机の椅子にどさりと身を投げ出すように座った。 「なんでそういう無茶な歩き方をするんです?」 先日、結局聞きそびれたことを聞くと、三蔵は嫌そうに目を眇めた。踏み込まれるのを避けたいのだろう。戒律は平気で破るくせに、妙なところだけ潔癖なものだ。それとも、戒律よりも強烈に三蔵を縛り付け、駆り立てるものが、こんな無茶をさせているのか。 「お前には関係ない」 事実を平板に言っただけなのだろうが、その物言いは八戒を聊かムッとさせた。 「関係ないのは分かりますけど、風邪を引いたりしたら困るのは貴方自身でしょう。・・・さっさと脱いでください。それとも脱がせてあげましょうか」 三蔵も分からず屋ではない。舌打ちしつつ経文を取り外し、震える指を帯に掛けた。今回は八戒の手伝いも必要なさそうだ。 「なあ、これで足りる?」 戻ってきた悟空は、服に加えてたくさんのタオルと毛布を抱え、入口につっかえそうになっていた。その一生懸命さが眩しく、八戒は思わず微笑んだ。 「ありがとうございます。じゃあ、三蔵の身体を拭いてあげましょう」 悟空と八戒は、止めろ離せ自分でやると抵抗する三蔵の身体を少々乱暴にタオルでこすり、寝衣を着せた。それから、床に毛布を一枚敷き、余ったタオルと残りの毛布で三蔵と自分たちをくるみこんだ。 「うぉ、三蔵すっげー冷てーよ!」 悟空は三蔵に前から取りつき、八戒は後ろから三蔵の身体に腕を回した。前回の轍を踏まないように、八戒はできるだけ間接的に触れようと、毛布越しに身体を寄せた。 「少しは訓練してますから前みたいにはならないと思いますけど」 前みたいって何だ?という悟空のごもっともな疑問は笑ってかわし、八戒は適度な気を送ることに集中した。しばらくすると三蔵の震えは止まり、さらにもう少し経つと、悟空の寝息が聞こえ始めた。 「ふふふ、暖かくて気持ちがいいんでしょうね」 「・・・・・ガキが重てえんだよ」 憎まれ口ながら、三蔵の声が若干柔らかく、八戒は目を細めた。 「あの、お節介は承知の上ですけど、凍死しそうな旅程を止めるわけにはいかないんですか」 三蔵はフンと鼻を鳴らした。余計なお世話だと言うのかと思いきや、彼は全く別の話を始めた。 「お前、経文を二つ受け継いだ三蔵法師の話は知っているか」 「ええ、講義で聞いた覚えがあります」 「それが俺だ」 え、と八戒は驚いた。講義で聞いた限り、その三蔵法師はもっと年かさのはずだ。そう言うと、三蔵は微かに笑った。 「情報が古いぞ。そっちは俺の師匠だ。師の経文は二つとも俺が受け継いだ」 「じゃあ、普段肩にかけているもの以外にもう一つ経文があるんですね?」 八戒が聞くと、三蔵は押し黙った。ギリと歯ぎしりの音がする。 「・・・・・・受け継いだ直後に一つは奪われた」 ああ、なるほど、と八戒は内心独りごちた。それで話が見えた。三蔵はずっと、失われた経文を探しているのだ。三蔵の師がどうなったのか、聞くに気にもならなかった。健在ならその存在を見聞きしていないはずはあるまい。おそらく三蔵は経文も師もいちどきに失ったのだ。 経文の喪失は、桃源郷の安定を脅かすだけでなく、三蔵本人にとっても、そして、その師にとっても、三蔵法師としての適格性を疑われかねない大ごとである。三蔵は、自身と桃源郷のためだけでなく、師の名誉ためにも経文を取り戻さなければならない。 「これは俺に、俺だけに課された使命だ」 声に強い意思が滲む。三蔵を、三蔵法師という重い十字架に縛り付ける鎖を見る思いがして、八戒は溜息を吐いた。 雪の止んだ隙を突いて八戒が帰って行った後、三蔵は悟空が目を覚ますまで執務室で毛布にくるまっていた。経文を奪われた間抜けな三蔵法師には子守がお似合いなのかもしれない。やがてむくりと起きた悟空は、腹減った!と夕飯を食べ、風呂に入って、今は改めて布団の中である。結構な御身分だ。 冷える執務室にありながら、三蔵の身体は今、内側から温かである。気を練る訓練を始めたと八戒が言っただけのことはあり、注がれた熱はゆっくりと落ち着いたものであった。心地よさが半分、後の半分は物足りなさを覚え、三蔵はままならないものだと唇の端で己を嗤った。 八戒と寝てから十日ほど経っている。あれ以来、しかじかと顔を合わせるのは今日が初めてだった。この間、経文探しに走り回り、身体の欲求など覚えなかったのに、顔を見た途端に皮膚の内側が疼く感じがした。こんな感覚は過去に経験のないことだ。考えてみれば当たり前だろう。他人の前に身体を投げ出すなどということ自体、あの夜が初めてだったのだから。断片的な記憶しかないが、それを嘆こうとは三蔵は思わなかった。重要なのは八戒が逃げなかったことだ。あの場面で八戒は三蔵の傍に在ることを選び、差し出された肉体を明確に受け取ったのだ。それどころか、彼は自身を差し出し返した。そのことが三蔵に十分な満足をもたらしたといえる。他は余禄のようなものだ。 八戒は三蔵を選んだ。追い込まれたとはいえ、はっきりと彼の意思で選んだ。 ざまあみろ、と誰に言うでもなく独りごち、三蔵は煙草に火を点けた。しかし、白い煙を吐き出し、煙の行方を目で追ううちに、ふと、この胸のすくような気分は、自分自身の弱さの表れかもしれないとの考えが浮かび、三蔵は眉間に皺を寄せた。 強くありなさいと師は言い残し、三蔵はその言葉を守ろうと努めている。しかし実際のところ、自分が決して強くはないことを三蔵は良く知っていた。弱い自分がバラバラにならないよう必死に繋ぎ止める日々にあって、絶対的に三蔵を選ぶ人物の存在を無意識のうちに求めたのだろうか。そんなことのために八戒に生きる方を選べと仄めかし続けていたのだろうか。 駄目だ、と三蔵は頭を振った。そうであってはならない。八戒の道は最後には八戒が選ぶしかない。三蔵自身の人生が三蔵の選択の結果であるように。だが、それで八戒が背を向けたら――? 三蔵は苦虫を噛み潰したような顔で煙草を揉み消した。ぐだぐだ考えるのは性に合わない。なんにせよ八戒に選ばせる以外にない、とさしあたっての結論を下し、三蔵は二本目の煙草に火を点け、急ぎの書類に目を落とした。 それから一週間後、いつものように八戒が寺にやってきた。訪問の間隔が特に伸びたわけでもないのだが、その一週間は三蔵にとってやたらと長かった。経文探しの手蔓が途切れ、手持ち無沙汰になったせいかもしれない。八戒は、普段通りに悟空に勉強を教え、そして普段通りに三蔵と世間話をして帰って行った。しかし、何処か奇妙な感じが残った。その後また長い一週間を、三蔵はじりじりしながら過ごすこととなった。やっと八戒が訪ねてきたとき、彼はやはり普段通り愛想よく、コーヒーを淹れて手製の菓子を振る舞った。しかし、何か変だ。腹の立つ仮面のような笑顔ではないが、やはり違和感があった。悟空も異変を察知したとみえ、八戒が帰った後、怪訝そうな顔を三蔵に向けた。 「なあ、八戒どうかしたのかな」 「さあな」 「喧嘩した?」 「いや。・・・なんでそんなことを聞く」 問い返すと悟空は首を竦めた。 「・・・・うん、なんて言ったらいいのかわかんねーけど、えーと、何だか息が苦しい感じがするから」 「気になるなら明日にでも行って来い」 三蔵が促すと、意外なことに悟空は首を横に振った。 「何か苦しそうなのは、三蔵もじゃん」 その場では、馬鹿を言え、とあしらったが、執務室に一人残った後も、苦しそうだ、という言葉は耳に残った。八戒を待って焦れていたのは事実だろう。会ってどうするわけでもないのに待ちかねていた。それが悟空には苦しそうに見えたのか。それとも、自分では分からない何かが表に滲んでいたのか。 面倒くせえ、と毒づいて、三蔵は立ちあがった。あれこれ考えても埒が明くものではない。ならばすべきことは一つだ。 三蔵は窓を開けて執務室の外に出た。冷え込みの厳しい夜だが、身体は燃え立つようだ。八戒め、この駄賃は高くつくぞ、と独りごち、三蔵は月の輝く中、雪を踏みしめて歩き始めた。 聊か荒っぽいノックの音が聞こえたのは、八戒がちょうど台所の電気を消して寝室の明かりをつけたときであった。悟浄ではないだろう。そもそも、彼はここのところ、例の女性に気に入られ、毎日のように相手をさせられているらしく、ろくに帰ってこない。干からびていなければいいのだが。 「はい、どちら様ですか」 言いながらドアを開けると、あまり人相の良くない最高僧が立っていた。 「・・・・・おや、いらっしゃい」 驚きのあまり、ごく普通の挨拶が出た。三蔵は、邪魔する、と言い、ずかずかと室内に入ってくる。今日は凍えて低体温症になっているわけではなさそうだ、と内心独りごち、八戒は半分だけホッとした。残る半分はあまり良心的でないことを考えている自覚があり、八戒は急いでそれに蓋をした。 「お茶でもどうです?」 午後三時の客に向かって言うべき台詞を、午前零時の客に向かって言っていることは分かっていたが、他に何を言ってよいか、八戒には分からなかった。何を見ても桜色に染まる瞼を思い出すというのに、本人を直視するのは難儀なことであった。案の定、三蔵は呆れたようだ。 「おかしいぞ、お前」 言いながら三蔵が近づいてくる。八戒は思わず後ずさったが、数歩もいかないうちに壁に突き当たった。 「おかしいのは俺もだがな」 目前にまで迫ってきた瞳が笑ったように細められたかと思う間もなく、後頭部を掴まれ、少し低い位置から唇が押し付けられた。頭の芯が痺れる。膨れ上がる欲望に抗しきれずに唇を開いたのは、八戒の方であった。その後は貪り合うように口づけ合った。 それから引きずられるように寝室へ行き、ベッドに背中を押し付けられると、また口づけが降ってきた。その間、三蔵の指が八戒の寝間着のボタンを外しにかかる。案外と器用なものだ、と状況を理解しきれていない頭で八戒は考えていた。 「・・・・僕だけ脱がすんですか?」 すでに首筋に舌を這わせている三蔵に八戒がそう言うと、彼は喉の奥で笑うような声を出した。 「そういう趣向が好みならそうしてやってもいいが」 三蔵の声が笑っていたのはそこまでだった。 「今日は駄目だ」 三蔵は八戒に手伝う暇を与えず、二人分の衣服を剥ぎとり、八戒の上に覆いかぶさってきた。肌と肌が触れ合う感触が心地よく、八戒は三蔵の唇を肌に感じながら、その背に腕を回した。もはやどんな気が流れ出ようと、八戒には制御不能だ。 「この前は・・・・貴方がねだって可愛かったのに・・・ッ」 憎まれ口をきくと、三蔵は八戒の肩に軽く歯を立てた。 「なら今度はお前がねだればいいだろ」 それでイーヴンだと言いたいらしい。八戒は手を滑らせ、三蔵の髪に指を差し入れた。 「じゃあ・・・・・・・好きなだけ汚して・・・ください・・・ッ・・・・・溶けてなくなるくらい・・・・どろどろに」 上等だ、と囁かれたような気がしたが、もう八戒は聞いていられなかった。何処に触れられても、気がおかしくなりそうなほどの快楽が湧き出た。もしかしたら気が逆流して体内を巡っていたのかもしれない。 三蔵に翻弄されながら、八戒の脳裏に桜色の瞼が浮かんだ。あれほど綺麗な色ではないかもしれないが、今は自分の瞼が染まっているのだろう。そんなことを思い、瞼が熱く感じられたそのとき、何かが触れた気がして薄目を開けると目の前に三蔵の一物があった。八戒は迷わず銜え込み、舌を絡めた。好きなだけ汚せばいい。三蔵にならどれだけ汚されてもいい。 そう、三蔵になら。八戒は三蔵の陰茎に咥内を犯されながら己を嗤った。雑巾のくせに汚される相手を選んでいる。しかし、三蔵以外の選択肢などあったろうか。答えは否だ。 三蔵の愛撫に酔い、八戒は身を捩った。 悟能としての道が断たれ、八戒としての人生が始まったときに既に道はあったのではないか。真っ直ぐ三蔵に続く道が。部分的には三蔵が設えたのだろうが、いつの間にかそこを行くのが当然になっていた。もちろん、選んだのは八戒自身であり、他の誰でも――三蔵でさえも――ない。他の道もない。たとえ雪の下に隠れている道があったとしても、それが後で見えたとしても、きっと選ばないだろう。いついかなる時でも三蔵を選ぶのだ。それはもはや決意ですらなかった。 でも三蔵は? 考えた瞬間、切羽詰まった波が八戒の下半身を揺さぶった。八戒、と呼ばれ、くぐもった声でよがりながら目を開くと、一物が引き抜かれていった。喪失感にあえぐまもなく、今度は唇で唇を塞がれた。三蔵は二人分の得物をまとめて扱きながら、狂ったように八戒に口づけていた。その瞼の桜色が見えた刹那、最後の大波に襲われ、八戒は絶頂に達した。 はっと気づくと二人してベッドに倒れていた。意識を飛ばしていたのはさほど長い間ではなかったらしく、身体がまだ火照っている。三蔵も八戒と同時に吐精したようで、八戒の腹には二人が出したものがべったりとついていた。 「シャワーでも浴びますか? 風呂が良ければ追い炊きしますけど」 悟浄が帰ってきたときのために風呂の栓は抜いていない。ちょうどよかったと思い、起き上がろうとすると、腕を掴まれた。これでは動けない。 「風呂だ」 「ええ、じゃあ追い炊きしますからお先にど・・・」 「お前も一緒に入るんだ」 まるで駄々っ子である。八戒はくすりと笑った。すると、三蔵の手が頬に触れてきた。 「顔を見せろ」 「散々見てるじゃないですか」 「いいから。・・・・もう少し笑え」 訳が分からないが、三蔵がそんなことを言うのがおかしくて八戒はくすくすと笑った。すると今度は三蔵は身を乗り出して八戒に口づけた。唇をゆるく食むだけの、優しい口づけだった。唇を離すと、三蔵は満足げに口の端を吊り上げた。 「・・・・今度はなんです?」 八戒が吐息をついて見上げれば、三蔵は熱い息と共に首筋に顔を埋めてきた。 「風呂は後回しだ」 どうしてと問い返すと、三蔵は首筋を吸い上げた。きっと跡が残る。 「なんだ、嫌なのか。俺より風呂がいいのか」 分かっていて聞いているのだろう。八戒は三蔵の背に腕を回した。この細身の身体に桃源郷の命運がかかっていると思えば胸が詰まる。 「いいえ。好きなだけってさっき言いましたしね。・・・それに」 八戒は言いよどんだ。本心を吐露するような物言いはあまりしたくなかった。押し付けがましくなりそうで嫌だ。しかし、三蔵が中途半端な発言を放っておいてくれるわけもなかった。 「それに、なんだ」 達したばかりの一物を指で弄ばれ、八戒は呻いた。 「・・・・ッ・・・・・・貴方を選ばないなんて・・・・ありえませんから・・・ッ」 八戒は、できるだけさらりと聞こえるように言葉を選んだつもりであった。しかし、三蔵は十分煽られたようで、息を呑んだかと思うと、無言で八戒を苛み始めた。 快楽に呑まれつつ、八戒は胸の内で独りごちた。貴方しかいない、貴方以外の選択肢なんて存在しない、と。いつでも貴方を選ぶのだ、と。 でも、三蔵は? 答えは歴然としている。三蔵法師としての任務は重い。経典を探す責務から三蔵は逃れられまい。ゆえに、三蔵は八戒を常に選べるわけではない。いや、むしろ、選ばせてはいけない時が来るかもしれない。やむを得ないではないか。足手まといになるのは真っ平御免だ。 八戒は唇を噛む代わりに、目の前にある三蔵の肌に唇を這わせ、きつく吸い上げた。白い肌に赤い花がすぐに咲く。白雪の中に咲く紅梅のようにそれは浮かび上がり、八戒の脳裏に焼き付いた。 |
| ―了―
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| 「竹箆(しっぺい)」様にてキリ番ニアピン88887hitを踏んだ時のリクエスト品♪ リク内容は『発情する三蔵様(爆)』。本家様が書かれる三蔵様が時折 しかも、水面下で「ちょっとリバっぽくしてもいい?」「いいですよー。むしろひっくり返しちゃっても(核爆)」などという遣り取りを経た結果、↑のようなお話に(てへ☆)。苦手な方がいらっしゃるのは承知ですが、スミマセン、香月的には一挙両得な作品でした。 anpavc様、本当に有り難うございました! |
「常連です!」という方も「自分行動範囲狭いモンで;」という方も、読んだらぽちっと↑ 同志の輪を広げましょう♪ |