なんなんだろうか・・・
気になりだしたらとまらなくて、目が離せないくせに
目が合うとあわせられない。
気になって気になって気になって・・・・
傍にいたいけど逃げ出しかける。
一体この気持ちをなんと言うのか・・・
分かってる・・・本当は・・・
ただ自分にもそんな感情が芽生えるなんて思いもしなかったから・・・
それも寄りによって・・・
「三蔵?」
呼ばれてはっと我に帰ると隣に腰をかけていた八戒が不思議そうに俺を見ていた。
「どうしたんですか?ボーっとして・・・」
「何でもねえよ」
「ならいいんですが・・・」
全然よくねえ・・・
そう心密かに思う・・・
多分俺が八戒に対して抱いているこの問題の感情は・・・・
考えられなかった・・・
いらないと、ずっと思っていたから・・・
その感情を悪いと思ったことはない。
けれど、必要ないと思っていたし・・・
自分にその感情がうまれることなんてないと思っていたから・・・
誰かのために生きるとか、誰かのために死ぬとか。
そんなことは真っ平だし、誰かに執着するってことも・・・
もうないと思っていた。
以前俺が唯一必要とした人は、尊敬という感情を持っていた人。
父であり、師匠だった人・・・
だが・・・・
「三蔵」
「なんだ・・・?」
「なんだじゃないですよ、どうしたんですか?最近なんかずっと考え込んでませんか?」
「・・・・・・」
心配そうに俺を見る翡翠の瞳を見つめ返す。
「・・・なんでもねえよ」
そう言って視線を外した。
八戒はどう思っただろうか・・・
『そうですか・・・』そういったきり、八戒は一言も喋らなかった・・・
俺も話すことはしなかった。
もともと二人ともおしゃべりではない。
静かな時間が流れていた。
今日は全員が一人部屋だ。
けれど、俺は今八戒の部屋に来ていた・・・
特に意味があったわけじゃなかったし、八戒も特に用件については聞いてこなかった。
出されたコーヒーを飲んで、不自然ではない間合いで部屋を出た。
何となくよってみた・・・
そんな雰囲気だったかもしれない・・・
ただ、傍にいたかっただけだとしても・・・・
夕食も終え、それぞれが休息を取るべく部屋に引き上げた。
一人窓の外の月を眺め考える。
言ってしまえば楽になる・・・そうなふうに考えたこともあった。
けれど、そうもいかない・・・・
八戒にはきっと負担になるだろうこの思い・・・
最愛のものを失って、きっと・・・・
伝えたいけど・・・それもかなわない・・・
この感情が、こんなに苦しいなんて思いもしなかった・・・
どうしたらいいのだろうか、どうしたいのだろうか・・・・
自分は一体どうしたいのか・・・
どうにもならないこの感情。
とまらない、引き返せない。
なかったことになんか出来やしない。
いっそ気がつかなければよかったのか・・・
こんな感情・・・・生まれなければ、こんなに悩むことも、苦しむこともなかった。
「らしくねぇ・・・」
自分らしくってなんだ?男らしくとか・・・
なんなんだそれは・・・
ふっと一つ息をつき、部屋を出た。
水でも飲もう。喉がからからだ・・・・
階段に向かって歩けばすぐ隣の部屋から明かりが漏れていてた・・・
八戒の部屋だ。
「まだおきてんのか?」
もう真夜中といってもいい時間だ。
連日の運転で疲れているはずだから、もうすっかり眠っていると思っていた。
起きているのならコーヒーでも入れてもらおうか・・・
大丈夫だ・・・
まだ、普通を装えるはずだから・・・
そう考えてドアを開けた。
「八戒・・・・」
そっとその名を呼んで中に入る。
確かに明かりはついていた・・・
ベッドに寝転がり本を読んでいたのだろうか・・・
読みかけの本もそのままに軽い寝息を立てて眠っている。
「・・・・・・」
随分暖かくなったとはいえ、まだ夜は冷える。
寝衣のままでは風邪を引くだろう・・・
そう思って、そっと足元の毛布をおこさぬようにかけてやる。
そして、身をかがめてその寝顔を見つめた。
こうして至近距離で彼の寝顔を見ることなんてそうはないことだ。
何処か幼ささえ感じる寝顔は無防備で・・・
そっと起こさないように細心の注意を払って彼の髪に触れた。
さらりと柔らかく流れる髪の感触は気持ちよかった。
無意識だったかもしれない・・・
寝ている八戒の唇に、自分のそれを重ねた・・・・
「好きだ・・・」
こんなのは卑怯かもしれない・・・
寝ている相手への一人だけの告白。
答えがないことを承知だし、明日起きれば八戒はそのことを知らない。
自己満足の世界だろう・・・
けれど・・・それでも・・・
これが最期だから・・・
これが・・・最期・・・
もう一度、軽くキスを落として・・・部屋を出た。
これが最期と、何度も言い聞かせて・・・
翌日・・・結局眠ることなんて出来なかった俺は、誰よりも先に下の食堂に降りていた・・・
一人でいると何度となく思い出す。
思いの他柔らかかった唇の感触を、リアルに・・・
幼く見えた、あの寝顔を・・・
昨日の一瞬一瞬を、思い出すから・・
「おはようございます」
その声に心臓が止まりそうになる。
昨日の・・・あの一瞬で、この思いも最期と決めたのに・・・
「悟空たちはまだですか?」
「まだ寝てんだろ?ほっとけ」
「そうですか・・・あの・・三蔵」
「・・・なんだ?」
「ちょっと、いいですか?」
視線で軽く外へと促す。
特にこれといって断る理由もなく、俺は八戒の誘いのままに外へ出た。
外へ出ると淡いピンク色が視界を埋めた。
もう桜の咲く季節か・・・
そんなことを漠然と考えた。
「聞かないんですか・・・?」
突然切り出された話に、俺はついていくことが出来なかった。
なにを聞けと?
「一人で言うなんて・・・ちょっとずるいですよ・・・」
心臓が止まるかと思った・・・
まさかとは思うが・・・
「おまえ・・・」
「はい・・・」
やっぱり・・・起きてやがった・・・・
一人の告白は・・・成立しなかったのだ・・・
「聞かないんですか?返事・・・」
「聞いてどうする・・・」
返事なんて分かってる・・・
そう思った。そしてフイッと八戒から目を閉じ、顔を背けた・・・
その瞬間、昨日の感触が・・・忘れるはずも、間違うはずもない・・・
驚いて目を開けると、息がかかるほど近く、八戒は照れたように笑っていた・・・
「僕も・・・あなたが好きです」
その瞬間をなんていおうか・・・
知り合い、仲間・・・そして恋人
呼び方や価値観はめまぐるしく変わっていって・・・
そっと手を伸ばせば触れられる。
今なら、目を見ていえる・・・
「おまえが好きだ・・・」
「はい・・・」
まだ鼓動ははやくなる。
けれど何かが変わっていくだろう。
苦しくないし、辛くもない・・・
現金なものだ・・・
手を伸ばせば触れられる距離にいる。
誰かを愛すること・・・
愛されること・・・
受け入れていけるはずだ・・・俺も、お前も・・・
先を急ぐことはない。
ゆっくり、行けば・・・それでいい・・・
そうなんだろう?なあ・・・
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―了―
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「Freebule」(閉鎖)様にて66666hitキリ番を踏んだ時のリクエスト品♪
リク内容は『馴れ初め、自分の感情に苦悩する三蔵様、寝ている八戒さんにキス♪』・・・当時、香月の中でこのシチュがツボだったもので、同時期に余所様でも同じリクをしております(^_^;)
『寝ているけど眠っているのかタヌキなのかはお任せ』としたにも拘らず、タヌキ寝入り率100%だった辺り、38ストは皆八戒さんの事を良く解っていると思います(笑)(あ、ネタバレ;)。 |

「懐かしい!」という方も「こんなサイトあったんだ」という方も、読んだらぽちっと↑
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