憮然とした三蔵の表情。
困りまくった八戒の表情。
どちらも消して見慣れぬものではない。
一人部屋が取れた本日の宿で、同じ部屋。
八戒に宛がわれた部屋に二人でいた。
八戒が三蔵の部屋を尋ねる事はあっても、三蔵が八戒の部屋を尋ねることは稀で・・・
それはせいぜい煙草が切れただのコーヒーを入れろだの・・・
そんな内容だ。
何故今こうしているのか・・・
そして三蔵の憮然とした表情の理由。
何故三蔵の手首が緑のリボンで丁寧に結わかれているのか・・・・
「あのクソガッパ・・・・」
そう、今から一時間ほどさかのぼる。
全員に与えられた部屋に各々が戻る時間。
八戒が今日は一番先に戻った。
それを見定めた後、悟浄、悟空、三蔵と、なんとも珍しいメンバーでの会議が行われた。
「どうする?」
悟空の問いに三蔵はちらりと視線をやると、
「勝手にしろ」
とだけいいはなった。
今日は八戒の誕生日だ。
本当ならもっと盛大に祝ってやりたかったし、プレゼントだって用意したかった。
しかしこんないきあたりばっかりの旅で、都合よくプレゼントは用意することが出来なかった。
この町についたのだって、もう店が閉まっていて開いているのは酒屋と宿場だけだった。
酒屋で豪勢にともいかず、結局いつも通りの時間が過ぎていく。
そして現在、せめて何かか八戒にしてやりたい気持ちからここに三人は残っていた。
「どうすっかなあ・・・・」
悟浄は煙草に火をつけて紫煙を上らせた。
八戒の喜ぶもの・・・
あいつって・・・どんなときにいい顔してたっけ・・・?
どんなときに嬉しそうな顔してた?
悟浄は記憶を辿っていく・・・
「あれ?」
そこで一つ結論に達した。
そしてちらりと視線を新聞を読んでいる人間に向けた。
気がつかれないように・・・・
『何でこいつも今ここにいるんだ?』
他人のことにはこれでもかというほどに関与しないはずの三蔵が・・・
悟浄はもしかしたら・・・という考えを膨らませていく・・・
そして、この二人の日常を思い返す。
『なるほど・・・ね』
そこで行き着いた結論に、悟浄はにやりと人知れず楽しそうな笑みを浮かべた。
八戒が一番綺麗に笑うとき。
それは三蔵の前だ。
そして三蔵のトゲが和らぐとき。
それは八戒と二人でいるとき。
そしてどこか二人で並んでいるときは落ち着かないようで、
でも二人でいたそうな、そんな感じ。
そういえばそうだった・・・
悟浄はそんなことを思い返して笑いをこらえる。
そうなると・・・
「なあ、三蔵」
「・・・・・・」
めんどくさそうに三蔵は視線だけを悟浄に向けた。
「八戒の誕生日祝い、勝手にしろって言ったよな?」
「ああ・・・それがどうした」
「ンじゃ、お言葉に甘えて・・・・」
「?」
そう言って悟浄は席を立つと、酒場の女の子に声をかけ、
彼女のしていた緑のリボンを頂戴してくる。
「了承したんだからな?文句言うなよ?」
そういう悟浄の有無を言わせない瞳に、そこはかとなく嫌な予感を覚えた三蔵だったが・・・
悟浄は悟空になにやら耳打ちすると、三人の八戒「誕生日おめでとう」企画が始まった・・・
「はい?」
部屋のドアをノックする音に、読んでいた本にしおりを挟んで閉じておく。
そしてそっと来訪者がドアにぶつからないように注意しながらドアを開けてやる。
「悟浄、悟空、どうしたんですか?」
二人は顔を見合わせて、せ―のと小さく言った後、二人同時に声をあげた。
「八戒!誕生日おめでとう!!」
「え・・・・・・」
心底驚いたように八戒は二人を見比べた。
今日が何日なのかを忘れてしまいそうなこんな旅の中で、それでも二人は覚えていてくれたこと。
「あ、ありがとうございます」
ふわりと心底嬉しそうに綺麗な笑顔を向けた八戒に、悟空も悟浄も満足げに笑った。
そして・・・
「これは俺ら三人からのプレゼントだ。受け取れ」
そう言ってドアの陰に隠れて(隠して)いた三蔵を八戒に向けて押し出した。
「え・・・」
あまりにも予想外の大きなプレゼントに、流石に八戒もすぐに反応は出来なかったらしく・・・呆然としているのに、無常にもドアは閉められた。
「後は好きにしてくれ」
そういう楽しそうな声を残して・・・
そして残されたのは両手首を緑色のリボンでまとめられている、この上もなく不機嫌そうな三蔵と、この状況をどうしていいのかわからないでいる八戒だった。
沈黙を破ったのは以外にも三蔵のほうだった。
「おい・・・・」
「あ、はい・・・」
「これ・・・どうにかしろ」
そう言って自分の手首を視線で示す。
「あ・・・そうですね・・・」
いまだに思考を切り替えられないらしく、八戒はどこかぼんやりしたように答えて、
三蔵の手首を拘束していた緑のリボンを解いてやる。
しゅるっと軽く布の擦れる音を残してリボンは解けた。
「三蔵」
「何だ」
「三人からって言ってましたけど・・・三蔵からのプレゼントでもあるんですか?」
そういわれて、三蔵はくわえかけた煙草を落とす。
「いやあ・・・三蔵でもそんなことをするのかなあって・・・」
「・・・・・・」
「びっくりしただけです・・・」
「素面でそんなこと聞かれるほうが驚きだ」
確かにと八戒はここに来てようやく笑って頷いた。
「でも、悟浄も悟空も、何で僕の誕生日に三蔵だったんですかね」
くすくすと笑っている八戒に、三蔵は「知るか」とだけ返した。
そして煙草をくわえ、紫煙を昇らせる。
「僕としては嬉しいんですけど」
「ならやるよ」
「はい・・・?」
「やる」
「三蔵をですか?」
「不服か?」
「いや・・・不服とかそういうものではなくて・・・」
「俺は一向にかまわんがな・・・」
「え・・・・?」
それってどういうことですか?
八戒の頭の中に無数のハテナが飛び交う。
「お前にしては随分にぶいな・・・・」
「といわれましても・・・・」
「一から十まで言わんとわからんか?」
三蔵は八戒の腕を掴んで引き寄せ、そのまま腕に抱きしめた。
「さっ・・・三蔵!?」
「もしお前が俺を欲しいなら、くれてやる」
「・・・・・・あ、あの・・・」
「あの馬鹿コンビがやったことが切欠かと思うと癪に触るがな・・・これだけはいっておく」
「・・・・・・・」
「おまえが好きだ」
だからお前が俺を欲しいなら、俺の全てをお前にやる
「・・・・本当に・・・・びっくりですよ・・・・」
そう呟いて、八戒は三蔵の肩に額を寄せた。
「で?どうなんだ?」
「何がですか?」
「いるのか?いらねえのか?」
どこか楽しそうな三蔵に、八戒はクスリと笑って・・・
「どう思います?」
「さあな、俺が決めることじゃねえからな・・・」
「そのわりには自信ありそうじゃないですか?」
「・・・まあな」
「もしかして、自惚れてます?」
「・・・少しだけ・・・な・・・」
軽い笑いを、どちらからともなく交した口付け。
「バースデープレゼント、ありがたく頂戴します」
そう言って八戒はふわりと笑った。
愛するあなたの誕生日
あなたの望むものをあげる。
自分が与えられるものを全て、あげる。
だから・・・心から、今日は笑っていて欲しい・・・
Happy Birthday To You
are you Happy?
|
―了―
|
「Freebule」(閉鎖)様にて84000hitキリ番を踏んだ時のリクエスト品♪
リク内容は『馴れ初め、八戒さんの誕生日に悟浄が2人の仲を取り持とうと、三蔵様にリボンを掛けてプレゼント』・・・83ならまた違った展開になるんでしょうね(といいますかまず間違いなく18禁になる:笑)。
リボンを手にした悟浄の悪戯っぽい笑みが見えてきそうな、楽しいssです♪
河村くるみ様、本当に有難うございました! |

「懐かしい!」という方も「こんなサイトあったんだ」という方も、読んだらぽちっと↑
同志の輪を広げましょう♪ |