どうしろと言うのだろうか・・・
この気まずい空気を・・・・
何であえて俺は八戒との相部屋を選んだのだろうか・・・
何とかなると思っていたけれど…なんともならなかった・・・
気まずい沈黙。
八戒との時間で沈黙は珍しくはない。
けれどそれは消して気まずい沈黙ではなかったから・・・
俺はそれなりにその沈黙が気に入っていた
けれど…
これは耐え切れないほどの沈黙だ・・・
こんなときに話をするという空気も話題も持っていない・・・
重い空気をものともしない悟空や、こう言ったときの会話転換の上手い悟浄を、
今だけは羨ましく思ったり・・・
相手である八戒は笑ってはいるが・・・
無理してんじゃねえよ・・・
「三蔵!まだみつかんねえのかよ」
「煩い、黙ってろっていってんだろうが!」
三蔵が大量の書物庫で調べ物をしていたときだ。
悟浄でも届かない高さの本棚。
その最上段の本をとろうとしたとき。当然だが三蔵は脚立を使っていた。
下で騒ぐ悟空に、いつも通りに悟浄が絡んでくる。
そしてそれはエスカレートし、事件は起きた。
「おい!おまえらいい加減・・・」
切れて二人をハリセンで殴ろうとした三蔵の足者が崩れたのだ。
どこがどうなったのか・・・
一瞬のことで、誰もわからない。
ただ、脚立が倒れ、上にのっていた三蔵が落ちた。
そしてその落ちた先には・・・
派手な音の後に起こった沈黙は、誰としてもいかんともしがたかった。
三蔵が落ちたそこにいたのは・・・
誰一人動くことも出来なかった。
そのまま数秒・・・
一番先に動いたのは三蔵だった。
慌ててばっと身を引くと、くるりと身を反転させて脚立を治し、
散らばった本を片し始める。
慌てて八戒もそれに習って本を拾い始めた。
正し、三蔵には背を向けて・・・
三蔵が落ちた瞬間。八戒は脚立からほんの少しだけ離れた床に座って本を読んでいたのだ。
脚立が倒れる気配に顔を上げ・・・
上から降ってきた三蔵と見事にぶつかって・・・三蔵はしっかり八戒を押し倒すような状態になってしまったのだ・・・
そして・・・しかも・・・・
「なあ・・・今のって、キス?」
悟空の爆弾質問に場が凍る
悟浄が悟空を抱えて逃走するが早いか、三蔵が切れて発砲するが早いか・・・
ばっちり・・・・キスをしてしまったのだった・・・
このメンバーにしては珍しいほどの・・・
普段の夕食時を知るものであれば、明日の天気を疑いたくなるほどの
沈黙を守ったままで夕食を終え、そして現在にいたるわけだが・・・
あのアクシデントは悟浄と悟空が悪いわけであって、
静かに本を読んでいた八戒は被害者で・・・・
当然俺だって被害者だった。
なのに何故その被害者同士がこんなに気まずい思いをしなくてはならないのだろうか・・・
新聞をめくるとほぼ同時にコトリと小さな音がした。
「あ・・・よかったらどうぞ・・・」
「・・・あぁ」
何なんだその間は・・・
会話会話に訪れるあまりにも不自然な間合いにむず痒いものを覚えつつも、
八戒が入れてくれたコーヒーを飲む。
こいつの入れるコーヒーはなぜか美味い。
少しなんともいえない気分がほぐれるようだった。
ふと顔を上げて、新聞から奴の様子を垣間見る。
俺と同様に掌サイズの文庫本をよんでいるようだ。
向かいにベッドに座って・・・静かに・・・
パラリ・・・パラリとページをめくる音だけが響く。
「あの・・・・」
不意に声をかけられた。
心臓が跳ね上がるような気がして・・・
「なにか・・・?」
「あ?」
「いえ・・・何となく視線を感じたんで・・・なにか用でもあるのかと・・・」
「いや・・・得に・・・」
「そうですか?」
「邪魔したな・・・」
「いえ・・・」
ここでいつもならお互いに毒づくところだろうが・・・・
なぜか今はお互いにそういうことは一切言わなかった。
自分らしくない・・・
こいつらしくない会話・・・
気に入らない・・・
「あのう・・・」
どこかおずおずと聞いてくるのに、視線だけで先を促す・・・
「昼間のこと・・・僕は気にしてませんから・・・」
「・・・・・・」
「三蔵も・・・気に・・・しないほうが・・・いいと思いますよ」
どこか歯切れ悪く・・・言われたその言葉よりも・・・
どこか泣き出しそうな翡翠色の瞳がきになって・・・
何もいえない自分が最高にいらだった・・・
「忘れちゃいましょう?」
にこりと微笑んでいるはずなのに・・・俺には泣いているようにしか見えなかった・・・
何故なのかはわからないけど・・・
わからないことばかりだ・・・
今、俺に何が言える?
俺は・・・
忘れられる?忘れたい・・・?
「忘れたいのか?」
「え?」
「おまえは忘れたいのか?」
「・・・・え・・・いや・・・あの・・・」
俺は・・・
忘れられない・・・・
どうして?
忘れられたくない
なかったことにできない、したくない、されたくない・・・
どうして・・・
「覚えていても、いいんですか?」
何故そんなことを聞く?
「好きにしろ・・・」
どうして・・・掴みかけた感情が、するりと音を立てて掌から滑り落ちた。
「そう・・・ですか・・・」
今にも泣き出しそうな・・・
掌から零れ落ちた感情が・・・
音を立てて砕け散った・・・
「俺は忘れない」
「え?」
「覚えていようと、忘れようと、おまえの自由だ」
そう・・・例えその感情が・・・二人異なるものでも
「はい・・・ありがとうございます」
同じ物でも・・・
「ところで・・・」
「なんですか?」
「おまえ、あのときのこと、はっきり覚えてるか?」
「え・・・そうですね・・・突然でしたし・・・」
「だったら・・・・」
掴みかけて、砕け散った破片を拾い集めて・・・
感情と言う名のパズルを組み立てよう・・・・
八戒との距離を詰め、腕を伸ばし、短い後ろ髪に指を絡めて引き寄せる。
静かに重ねる二度目のキス。
ぎこちなさは否めなくても、暖かい・・・
もう一度、一つ一つ確かめていこう。
キスも、気持ちも・・・
お前を好きだということも・・・・
感情と言う名のそのパズル、最期のワンピースは君だから・・・
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―了―
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「Freebule」(閉鎖)様にて94000hitのキリ番を踏んだ時のリクエスト品♪(どんだけ踏んでんねんコイツ)
リク内容は、『馴れ初め、アクシデントでキスをしてしまうところから始まる恋』・・・少女マンガかよ、というツッコミの声が聞こえてきそう;
サイトマスター様も馴れ初め好きだったのをいいことに、キリ番を踏んでは馴れ初めを要求した極悪人です。
河村くるみ様、本当に有難うございました! |

「懐かしい!」という方も「こんなサイトあったんだ」という方も、読んだらぽちっと↑
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