万人に過去があるように
その命があるように・・・
この人知れぬ街を三蔵は知っていた。
地図にさえ載らない、それはそれは小さな街だ。
二人部屋が二つと知った瞬間に起こった悟空と悟浄のいつもの言い争い。
「こいつとだけは絶対にイヤだ!」
二人の声がハモリ、八戒は笑顔で二人のコンビネーションに拍手を送り。
三蔵は額に手をあて息をつく。
そのまま、回りを気にせず始まった言い争いに、
「どうします?三蔵」
「決まってる」
そう言って三蔵はまとめて置かれた荷物から、自分の分と八戒の分を選び、
それを八戒に向かって放り投げた。
それをしっかりキャッチして、
「そうしますか」
にっこりと微笑んで、言い争う二人を横に、堂々と部屋を出て、
向かいにある部屋に入り込んだのがおよそ五分ほど前。
「で?」
「何だ?」
「眠りたいんじゃなかったんですか?」
「ああ」
「じゃあ何で僕らこうしているんです?」
こうしている
それは一つのベッドの上で横になっている八戒に、覆い被さっている三蔵。
手首はしっかりと押さえ込まれていて、明らかに押し倒されたことが一目でわかるであろうこの現状のこと。
「もうすぐ悟空たちがくるんじゃないですか?」
「手はうってある」
それは「起こしたら殺す」と書かれたドアの前の張り紙。
「抜かりないですねえ」
「当たり前だ」
にやりと笑って、話はここまでとばかりに三蔵は八戒の唇を自分のそれで塞ぐ。
「んっ・・・」
八戒も徐々にその口付けに答え、それはどんどん深さをましていく。
「三蔵・・・」
キスの間に八戒はその名を呼んだ。
「何故・・・この街に?」
八戒の言葉に三蔵は一度動きを止めた。
「言いたくなければ構いません・・・・」
「・・・・・・・」
「明日逢いに行くという方のこと・・・ですか?」
「珍しいな」
八戒は普段こういうことには自ら首を突っ込むことはしない。
自ら他人の過去に触れることはしない。
「なんだか、いつもと違う気がしたんで・・・」
「何がだ?」
「貴方が・・・ですよ」
「・・・・まあ・・・昔世話になった奴がこの街にいる・・・それだけだ・・」
「それだけ?」
「ああ・・・」
スッと手をずらし、八戒のシャツの中に手を滑らせる。
「んぁっ・・・・」
その手が目的を持って動き出し、小さな突起を摘み弄ぶと、八戒の口からは
甘い声が漏れる。
再び口付けられれば、まるでアルコールを飲んだように体の中が熱くなって・・・
甘い熱がうずきだす。
頭の芯までおかしくなりそうな感覚に流されながら、
八戒は三蔵の背に腕を回した・・・
貴方が・・・自ら過去に近付くことを今までしなかったから・・・
初めて近付いて見せてくれた過去に・・・
何が有るのかきになっていた・・・
いつも通りに振舞っていても、どこかその瞳が過去を見ていた。
だから・・・いつもなら聞かないことも聞いた・・・
でも・・・今は・・・聞かなくてもいいと思う・・・
抱いてくれるこの腕は、名を呼んでくれるその声も、僕を映し出す紫の瞳も・・・
今の自分を見てくれているから・・・・
クチュリ・・・・
湿った卑屈な音が静けさの中に嫌味なほどに耳についた・・・
その音をなんとかしたくても、自分の体内から響くその音はどうすることも出来なくて・・・
「ふ・・・ん・・はぁ・・・」
「声を殺すことはない・・・」
「でも・・・」
「あいつらならもう寝てんだろ?」
向かいの部屋には悟空たち、下の階には宿のご主人達が寝ている・・・
元々八戒はこの行為をしているときの自分の声が好きではなかった。
甲高く、どこか甘えたようなその声が・・・
まるで自分のものではないかのような錯覚に陥るから・・・。
「八戒・・・・」
首筋に舌を這わせ、時折強く吸い上げれば耐え切れないように甘い声があがる。
「ん・・・やッです・・って・・・そんなとこ・・・隠せないじゃないですか」
抗議の声も流し、三蔵は綺麗に浮き出る鎖骨を舌でゆっくり辿る。
震える体を抱きしめて・・・
「やあっ・・・ん・・・あぁ・・」
中に入れていた指をゆっくりと増やして、内壁を擦るように動かせば
抑えきれない声があがる。
声も、熱も・・・どんどん高まる・・・
快楽の渦に溺れていく・・・・
「ハ・・・はあ・・・・んぅ・・・」
「ここがいいのか?」
クッと笑って、知り尽くしたポイントをついてやれば
ビクンと組み敷いた細い体がはねて、高く喘ぐ。
「や・・や、ん・・・も・・・」
体を捩り、その快楽に耐えるのに、中は甘く三蔵の指に絡みつく。
三蔵はその様を楽しげに眺めていた・・・
「もう・・・ほしいか?」
耳元でそっと囁かれる・・・
それだけでイキそうになるのを何とか耐えながら・・・
なんとか声を紡ぎ・・・
三蔵に伝える・・・
快楽に潤んだ翡翠の瞳にそっと口付け、
三蔵は焦らすことなく一気に貫いた。
強い刺激と痛み、そして快楽に頭がおかしくなりそうなほどに・・・
細い背をしならせて、痛みに堪えれば、徐々にそれは快楽へと誘う。
「はあ・・あ!あぁ・・ん」
「熱いな・・・おまえの中は・・・」
一定のリズムで揺さぶられ・・・
何もかも考えられなくなっていく・・・
それでも・・・八戒は両腕を伸ばし三蔵の背にそれをまわした。
甘えるような仕草ではない・・・
まるで包み込まれるような・・・そんなふうだった・・・
それに答えるように三蔵は強くその背を抱き返し・・・
最奥を目指して力強く突き上げた。
「は・・・ああぁ・・・・っ!」
ビクンと一度その身を震わせて、八戒は絶頂を迎えた。
「ッ・・・・・」
少しだけおくれて、三蔵も八戒の中で果てる。
八戒は三蔵に抱きしめられたままに、その意識を手放した・・・
頬に残る涙の後に、三蔵はそっと口付けた。
あの瞬間・・・全てを包み込むようだったこの両腕。
愛しい、最愛の人・・・
両の腕で自分を包み込むように…
温かく・・・そう・・・冷えた過去も、全てを受け入れてくれる・・・
そう伝えるかのように・・・
「大丈夫だ・・・俺は…ここにいる」
きっと不安だったんだろう・・・
過去を紡いだこの街に、自分の知らない三蔵の何かがあって・・・
何かが変わってしまうような、そんな不安・・・
そしてまた・・・きっと自分も不安だった・・・
何故、この街を思い出したのか・・・・
何故・・・この街にきてしまったのか・・・
わからないと言うことは不安だ・・・
さっき・・・あの瞬間。
八戒は無意識かもしれなくても、彼が両腕を広げて三蔵をそっと包み込むように抱きしめたとき。自分もまた、不安だったことを知った。
だからきっと・・・
今日はこの腕に抱きたかったのかもしれない・・・
潜在意識が・・・一人になりたくなかったのかもしれなかった・・・
どこかでおきていた甘え。
そして求めた。
温もり・・・
万人に過去があるように
その命があるように・・・
自分にもまた過去があり
過去を繋ぐ糸はいたるところに伸びている。
けれど帰るべき今があるから。
糸を手繰り寄せることはせず、その糸を伸ばしていく。
過去も今も、受け止めてくれる腕があれば
時には糸を手繰ることも悪くない。
今へと糸を伸ばしながら・・・・
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―了―
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「Freebule」(閉鎖)様にて裏1234hitキリ番を踏んだ時のリクエスト品(裏頁で踏んだので裏仕様)。
リク内容は、『公式小説3巻「螺旋の暦」、宿の張り紙の向こう』・・・マニアックもいいところです(-_-;)。
(補足説明:宿に入って部屋割りをきっかけに喧嘩を始めた5&9を尻目にさっさと同室を決めて部屋へ入った3&8、気付いた5&9がその部屋へ行くと、ドアに『起こしたら殺す』という張り紙が・・・という、本筋とは関係ないけど38&83に超美味しい内容)
河村くるみ様、本当に有難うございました! |

「懐かしい!」という方も、「こんなサイトあったんだ」という方も、読んだらぽちっと↑
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