一体、何がどうしてこういう状況に陥るハメになったのか。
それがひたすら疑問だった。
現状を理解することには頭がまわらないくせに、なぜ・どうしてといった疑問だけは次々と湧いてくる。
「――怖いんですか?」
別に怖かない。
八戒の顔がすぐ側にある。
二人の息は酒の臭い。
先ほどまで上機嫌で酒を煽っていたからだ。
そう。さっきまでは上機嫌だったのに。
今は頭の中がぐちゃぐちゃで、苛々する。
「三蔵が言ったんじゃないですか」
途切れ途切れに耳に入ってくる八戒の言葉。
そう。言ったのは確かに自分かもしれない。
「快楽だけを求めるなら、相手が誰だって一緒だろ?」
なぜそんなことを言ったのか。
そう。確か、夜な夜な女遊びに興じる悟浄を揶揄したのか――
記憶は酒のせいで朧だ。
「極端な話、俺とお前がやったとしても、それなりに肉体的快楽を感じることに変わりはないんだろう?」
悟浄が欲しいのは、愛する対象でなくて、とりあえず快楽を得る対象だと。
そういいたくてそういったつもりだった。
だが。
「僕と三蔵がやったとして・・・・・三蔵、感じるんですか?」
そのときの八戒の瞳は少し驚きに見開かれていて、それでいて何かをたくらんでいるような光がすぐに浮かんで、そして隠された。
「試してみるか?」
そう。軽く言ったはずだった。
まさか、のってくるなどとは思わずに。
「ん・・・・・・」
酒にうるんだ唇が、二つ重なる。
苦しげに眉を寄せる三蔵の顎を長い指先で捕らえて逃がさないようにし、八戒はより深く唇を重ねていく。
甘くて、少し苦い酒の味。柔らかな唇を割れば、奥のほうでビクビクとしている舌が時折八戒の舌と絡み合う。
「・・・・・・・っはぁ」
慣れない行為に呼吸を忘れ、肺が悲鳴をあげ始める。
逃れるように身を捩り、唇を離した。
「三蔵――」
鼻先で柔らかいため息混じりに名前を呼ばれ、思わず三蔵の薄く開いた唇からも吐息が漏れる。
甘い、とそう修飾したくなるような吐息。
本人は気付いていない。
整った顔立ちと、時折見せる気品高い雰囲気と。
そんな彼が漏らした吐息は、思わず誰をもはっとさせるものであろう。
美しさは二面性を持っている。
一つの面は、その美しさで人を驚嘆させる。
その半面で、美しさは人を狂わせる。
もっと美しいものを、と思う心で人の心が蝕まれることもあるのだ。
蝕まれた心は人を狂わせる。
自分の心が、思っていた以上に三蔵によって蝕まれていることに気付く。
「罪深い人ですね」
頬にかかった金色の髪を指で後ろへと撫で付けながら、八戒は三蔵の耳もとで囁いた。
「・・・・・・・」
何を言ってるんだ、と三蔵の紫の双眸がかすかに濁る。
「罪深い人――嫌いじゃありませんよ」
「一人で陥ちてろよ・・・・・」
「そんな、つれないこといわないで下さい」
笑って、ベッドへともつれるように倒れこんだ。
「まずはお試し番ってことで。
試してみてよかったら、一緒に溺れるのもいいと思いませんか?」
「・・・・・・・・・」
返答を促すように、はだけて顕になった首筋に舌を這わせた。
不慣れな自分と違って、あきらかに手馴れた八戒に、三蔵は戸惑う。
次々と服を脱がされ、顕になった肌に八戒の手や唇が触れる。
腹立たしくも反応してしまう身体にびくつくたびに、それを宥めるかのように優しく愛撫される。
「・・・・・ぁ」
堪えていた唇から思わず声が漏れた。
「感じちゃい――ました?」
くすりと笑うような八戒の言葉に。
感じている自分と同じぐらい腹がたった。
「別に、怖いことなんてないんですよ」
怖いのは、行為自体でなく、行為に溺れてしまうこと。
溺れた自分を見るのが、怖い。
そんな三蔵の心情をみすかのように、八戒は笑った。
◇
「っ、――っん」
ぎしぎしとべっどが軋む。
知識としてはあったものの、自分がするとは想像だにしなかった行為を、考えもしなかった相手としている。
自分の腰を掴む指が思っていたよりも細いことや、相手の瞳がこんなにも深い緑だったのかと、すこし見当違いなことをぼんやりと思いながら。
「何、考えてるんです――?」
深いところまで自身を進めたまま、八戒が少し掠れた声で問う。
「うるせぇ」
目の前の相手のことを考えていたとは、口が裂けても言いたくなくてそう毒づいた。
「それより、とっとと――すませろ」
入ったままの状態は、動いているときよりも気恥ずかしくて、何より自身が刺激を求めて疼くのがわかってしまう。
淫らに蠕動する三蔵の体内を感じながら、八戒はいつもの笑みを浮かべて、わかりましたと頷いた。
次の瞬間、三蔵は身体を反転させられた。
四つん這いになった状態で、改めて八戒に後ろから貫かれる衝撃に、思わず背が弓なりになり、高い声があがった。
◇
「・・・・・・・・・最悪だ」
枕に顔をうつぶせたまま、低く唸る三蔵。
「やだなぁ、三蔵。してる最中は気持ちよさそうだったくせに」
苦笑しながら、シーツ越しにそっと三蔵の腰をさする。
「でも、僕、よかったでしょ?」
子供のように無邪気に聞いてくる八戒を手で邪険に払う三蔵。
「悟浄が女の人のところへ通う気持ち、わからなくもないんですけどねぇ」
「あいつは、相手の前に快楽ありきなんだろう?」
「さぁ? ただ、今特定の相手がいないからとりあえず、っていう感じじゃないんですか?」
「同じことだろ?」
即答され、八戒は苦笑する。
「世界に俺と悟浄しかいなくなっても、俺はあいつとしたいとは思わん」
「へぇ」
嬉しそうに、八戒が声をあげる。
「ということは、ですよ。
三蔵が僕としてくれたってことは、それなりに意味があるとおもっていいってことですよね?」
返答はなかった。
が、拒絶の言葉もなかっただけ、それなりに脈があるのだろうと八戒は納得した。
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―了―
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「ここいらがふんばりどころ?」(閉鎖)様にてキリ番を踏んだ時のリクエスト品♪
リク内容は、『お初♪』・・・恥を覚悟で白状すると『三蔵ロストバージンby八戒(核爆)』とメールしました(死)。
既に複数回パソが変わって、クラッシュも1度や2度ではないので当時のメールは存在しませんが、若さ故の何とやらといいますか、相当舞い上がった内容だった事は今もよーく覚えております。
こんな阿呆に付き合って下さったマスター様方には、感謝してもしきれません。
てい様、本当に有難うございました! |

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