有り難き戴き物です♪







 託されたのは、小さな白銀のリング
 シンプルなデザインとは裏腹に、込められた想いは重い
 いつか…生涯を共にする覚悟が決まるまでは預けると
 覚悟と決意を託された…エンゲージ



『答えを急くつもりはない。お前が受け取る気になった時でいい』
 あれはもういつの事だったか。ただ、今日と同じように寒い日だったのは覚えている。石のないシンプルなシルバーのリングが、何故だか酷く重く感じられて。受け取る気になるまでは、お前に預けておくと。あの人がくれた優しさでさえ、狡いと思った。
 優しさが辛くて、ただツミとイタミだけを求めていた…かつての自分。
「from“S”to“H”…」
 “三蔵”から、“八戒”へ。託されたのはモノだけでなく真摯な程の想い。生涯を共にする覚悟を、渡しておいて。受け止めるか拒絶するかは、好きな時に決めていい…なんて。
「…かっこつけ過ぎですよ、三蔵?」
 リングを指で弾いて、呟いた吐息が白く靄を作って消える。八戒はリングを大事そうに指に嵌めて。そしてようやく寒々しい廊下の向こう、今宵の同室者の居る部屋の扉に手をかけた。暖かな温もりを享受するツミに、その身を委ねる決意を秘めて。



 夜更け過ぎ。八戒が子供二人の守りから開放され、ようやく部屋に戻って来たのを視線の端で捕らえて。三蔵はそのまま視線を新聞に戻した。必要以上に構うでも、さりとて無視するでもなく。意図して言葉で会話を作らなくとも、柔らかな空気を作リ出す術を八戒は心得ていて。三蔵が八戒との同室を希望する事が多いのは、一つにはそれが理由であった。
「コーヒー、ここに置きますね」
「ああ…」
 何時からだったろうか。一回一回、豆からドリップしているらしいブラックコーヒー。この穏やかな時と共に、ソレが三蔵の好きなモノに加わっていたのは。
「…?」
 ふと、カップに反射するように、何かが光って。三蔵は視線を又新聞から八戒に移して、そしてようやく…気付いた。
「…八戒」
「はい?」
 やや緊張した面持ちで振り向いた八戒の、左手の薬指。控えめに輝くシルバーリング。いつもチェーンで首に掛けて持ち歩いていたのは知っていたが、実際嵌めている所を見たのは、初めてだった。
「…コーヒー、もう一杯入れてくれ」
「あ、はい」
 やや拍子抜けしたように緊張を解いた八戒が、コーヒーを継ぎ足して。そのまま離れてゆく手を、捕まえた。
「あ…」
「思った通りだな。…よく似合ってる」
 どの位、部屋の外で逡巡していたのか。微かに震える左手は、冷え切っていた。じわじわと己の体温の移ってゆく指先にくちづければ、拗ねたような声が訴えた。
「人が悪いですよ。気付かないフリ、するなんて」
「…ふん」
 ニヤリと、口の端だけを吊り上げて笑ってから。三蔵は顎を杓って、寝室を指した。
「来いよ。決まったんだろ…覚悟」
「…はい」
 恥らうように、うっすらと頬を染めて。八戒はちいさくひとつ、うなづいた。



 日頃の言動からは想像の付かない位。ベットに倒す仕草さえ、慎重そのもの。八戒は布ごしに伝わる相手の温もりに安堵したまま。着衣を脱がして行く三蔵の手を、唯じっと見つめていた。
「ん…」
「寒いか?」
 晒された外気に震えた躯を包むように、抱き寄せる腕に力が篭って。見上げた先で真剣な瞳とぶつかって、訪れた沈黙。
「「……」」
 瞳を閉じて、くちづけをかわせば。互いに離れがたくて、くちづけは濃密さを増してゆく。絡めあって、交じり合って。いっそこのまま呼吸を止めてしまいたいとさえ、願い。もっと…とねだった己の無意識の言葉に驚いた。
「そう焦るな。キス位、幾らでもしてやるから」
 予告は言葉通りに、手加減抜きに真実。囁いた耳元から首筋、鎖骨から胸、さらには腰骨の辺りまでも。躯中に薄紅の花弁を散らせて…くちづけの嵐。躯の奥で震える想いの、強張りを溶かせて。吐息が押し出されて、声になる。
「ふ・・は…っ」
 慌ててシーツから離した手で口を覆えば、その手を逆に捕らえられる。
「隠すな」
「でも・・っ」
 ぎゅっと握りこんで、シーツの波間に戻される。あやすようなくちづけを繰り返しながら、いつもよりやや掠れた低音が…囁いた。
「見せろよ、全部」
「…そんな口説き文句、何処で覚えてきたんです?」
「さあな」
 ニヤリといつものように笑った三蔵の発言を。問い詰める代わりに背中に爪を立てて。クスクスと、微笑った唇にまたひとつ、くちづけが落ちてくる。
「安心しろ。どちらにせよ、実践するのはお前にだけだ」
「ん・・、は・・ふぁ…っ」
 抱き締められた、腕の強さ。
 告げられた、言葉の重さ。
 勿体無すぎて、幸せすぎて…眩暈がする。
「八戒…っ」
「あ・・、さん・・ぞ…っ」
 今はもう、貴方以外見えないから。
 繰り返し、繰り返し、互いの名前だけを紡いで。
 繰り返される熱とイタミと開放と。
 貴方だけを…感じていたい。
「ねぇ…もっと」
 もっと、もっと。
 どうかこの命尽きるまで。
 貴方の隣で、生きられるように。
 この指で光るリングみたいに、僕を。
 その瞳で、腕で、温もりで。
 ずっとずっと…繋いでいて。








―了―
「Jade」(閉鎖)様にて24444hitキリ番を踏んだ時のリクエスト品♪
リク内容は『お初♪』・・・すいません、この時期狂ったように方々でお初を求めておりました(-_-;)。
しかも、その後再びリクの機会に恵まれ、その際にこのssの前と後の話を書いていただきました♪
→こちら「Propose」です!
立花悠希様、本当に有難うございました!



「懐かしい!」という方も「こんなサイトあったんだ」という方も、読んだらぽちっと↑
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