有り難き頂き物です♪





光明三蔵の一声によって突如、金山寺はあわただしくなった。
僧侶達が総出で食事や掃除に精を出し、
祝言が始まる時には古びた寺がピカピカに磨かれた。

「ここってこんなに綺麗なお寺だったんですねぇ」

袴を着させられた八戒は光沢を放つ本堂を見回し、呟いた。
隣には白無垢に身を包んだ三蔵がいる。
角隠しでよく表情は見えなかったが、
肩はいつもと違って小さく見えた。

「いやぁ、娘を嫁にやる気持ちって言うのが味わいたかったんですよね」

という言葉は結婚して1年後に光明三蔵が八戒に言った言葉である。
よく玄奘三蔵が師匠のことを「いいかげんな人」だというのが、
ようやくこういうことかと、八戒はそのときになって理解できた。

1時間程度で終了した簡素な祝言のあと、
二人はそれぞれ別室で夜着に着替えさせられた。
八戒は着替えの間、若い僧侶の三蔵に対する敬愛の念を聞かされ続け、
改めて三蔵が最高僧であることを思い知った。
中には敬愛、とは違う念を抱いている者もいたが。

それにしても、あの性格と口調に彼の地位などすっかり忘れていた。
そしてそんなすごい人を嫁に欲しいなどと言った自分の図々しさに、
今更ながらに恥ずかしくなってきた。

「なんだか緊張してきました・・・・」

まさに禁忌の領域に踏み出そうとしている八戒は、
急激に襲ってきた緊張感に、心持ち動きが堅くなっていた。
そしてそのまま僧侶に案内され、寺の一番奥にある別院へと案内された。
そこはとても綺麗に磨かれ、美しい佇まいであったが寺は寺。
部屋は暗く、2本のろうそくの明かりだけが部屋を照らし出していた。
そのささやかな炎に照らされた畳に敷かれた白い布団の上に、
ふすまに背を向け正座している三蔵がいた。
彼を包む薄手の夜着が、三蔵の躰のラインをなぞり楚々とした色を放っている。
僧侶が無言でふすまを閉め、
その足音が完全に消えるのを待ってから八戒は三蔵の背後に座った。
よく目を凝らすと、肩は緊張で硬直し、
放つ気もいつもとは違って張りつめた印象を受ける。

「三蔵・・・・」

声をかければ、びくりと肩が動く。
怖がっているのかと思い、
優しく後ろから抱きしめてやると益々身が固く強ばった。

「怖がらないでいいんですよ・・・・」

風呂上がりの石鹸の匂いがする髪に唇を落とし、
緊張を和らげるように優しく囁いてやる。

「この間・・・・」

低い、少しだけ掠れた声にろうそくが揺れた。

「いきなりあんなことするから・・・・・・・・・」
「いいんです、あれは僕が悪かったんですから」
「しかし・・・いや、なんというか、
俺はお前と違ってこの寺の中で育ったから、
本当はこの後どうすればいいのかよくわからないし、それだけじゃない。
ここから外の生活も知らないんだ」
「良いんですよ、知らなくて。僕が教えてあげますから・・・・。
それに、僕も知らないことあります。一緒に憶えていきましょう。ね?」
「・・・・・八戒・・・・お前、変な奴だな」
「そ、そうですか・・・?」
「変だ。何でお前にはここまで言ってしまうんだろうな・・・・」
「三蔵・・・・」

身を丸める細い躰を、さらに強く抱きしめる。

「変な僕で良ければ、
この後はどうすればいいのか僕が知っているので、教えてあげられますよ?」
「・・・知ってるのか?」
「ええ、常識的範囲内で。まあ僕も祝言なんて初めてですから」
「そうか」

知らないことを素直に受け入れようとする謙虚な姿は、
八百屋では見られない姿で。
真っ白な花を自分色に染められるような、欲望が沸き上がってくる。

「三蔵、こちらを向いて」

促されて、言われたとおり八戒と向き合う形で正座し直す。
真っ正面から見つめられるのがどうにも照れくさくて俯いてしまう顎を、
そっと長く綺麗な指先が持ち上げた。
少しばかり背の高い八戒は、
見下ろす形で炎に揺らめく紫暗の瞳を覗き込んだ。

「目、閉じて下さいね」
「ん・・・」

言われて瞼を閉じると、
唇に暖かく柔らかい感触がして三蔵は驚いて身を退いてしまった。

「何を・・・・・」
「キス、ですよ。この間したでしょう?」

それは憶えているが、またするのかという戸惑うが三蔵の中にはあった。
あれは恥ずかしくて、どうしてわからなくなるから。

「大丈夫ですよ、僕がちゃんとリードしてあげますから。
三蔵は僕に躰を預けていればいいですからね。
だって初めてでしょ?
わからないことがあれば聞いてくれて構いませんから。
そのかわり、僕も三蔵に聞かなければわからないことあるんで、
教えて下さいね?」
「・・・・・わかった・・・」

意を決したように頷いた三蔵の目に、すでに迷いはなかった。
自ら強請るように目を閉じる。

か、かわいい・・・・。

八戒は目の前の愛らしい表情に、
感動のあまり咽びそうになるのを堪えつつ、
驚かさないようにゆっくりと唇を重ねた。

「・・・っ・・・・・・」

背中と腰に腕を回され、
逃げられなくなった躰を小刻みに震わせつ姿は、
どこか小動物を思わせた。

「三蔵・・・・息、していいんですよ?」
「・・・・どう、やって?」

解放された唇で少し怠そうに息を吐く。

「ここで、です」

笑って、そっと鼻先を摘んでやると、
その存在を思い出し、照れたように頬を赤らめた。

「・・・・・そんなの、・・・知ってる」
「そうですか?じゃあ、少しくらい苦しくなっても大丈夫ですよね?」

ぼそっと呟いた強がりを微笑ましく思いながら、再び唇を重ねた。
今度は深く、濡れた舌先で口腔を貪る。

「んんっ・・・・」

荒い、強引な舌の動きに体が竦んだ。
逃げようと突っぱねる片腕を捕らえられ、
逆に強く肩と腰を抱き寄せられる。

「・・んぅ・・・ふ・・」

布地の上から伝わる体温のなんと心地よいことか。
触れ合った部分から痺れるような熱があがる。
自分でさえ、そこが感じる場所だとは知らなかったのに。
躰は八戒の舌に、温度に。
全身の力を抜かれていく。

強ばりが抜け、ゆっくりと崩れ落ちる細い肢体を支えてやりながら、
八戒はまだ温もりを知らぬ白い布団の上に仰向けに寝かせてやった。

移動した重力に、無意識に白い腕が首に絡みつく。
熱い口付けが生んだ熱なのか、
首筋に触れる肌は熱くほんのりと桃色に色づいているようだった。

「ハァ・・・・」

1度目の口付けは暖かく、胸を締め付けられるような切なさを感じた。
2度目の口付けは熱く、甘美な熱に酔わされるようで激しい目眩がする。
トロン・・・・と蕩けた肌に、
潤んだ瞳は目の前の八戒を見つめながら、
どこか別の世界を見ているようで。
全てが初めてで、素直で初な反応にわくわくしてしまう。

「感じちゃいました?」

楽しそうに笑う声にも反応が無い。
只荒い息を鎮めるように呼吸を繰り返しているだけだ。

「僕ら今まで他愛のない話しかしてなくて・・・
お互いのことなんにも知らない。
それなのに・・・・どうしてこんなにも惹きつけられるのか・・・」

濡れた唇で張りのある首筋をなぞると、
伝わる感触はすべすべとしていて・・・・それだけで興奮した。

「三蔵の事・・・もっと知りたい・・・。
誰も知らない貴方を知りたいんです」

指先で流れるような背筋をそっと腰まで辿ると、
戦慄くように背が反り返り、首に絡められた腕に力がこもる。

「ここ、感じるんですか?」
「・・・や、ぁ・・・」
「ここは?」

辿った指先を今度は太股へ移し、
ツツッ・・と流線を描く脚を掌全体で撫でれば、
ざわざわと沸き上がる熱に溜まらず腰が浮き上がり、
脚が八戒の腰に絡みつく。

「やめろ・・・くすぐったい・・・」
「本当に?やめて欲しいですか?」

三蔵はクスクスと笑う声に眉をひそめ、
プイッと怒ったように顔を背けた。

「ああ、怒らないで下さいって」
「煩い、変態」
「心外ですねぇ」
「やっ・・・!や、めろ・・・ってっ・・・ハァ、ンッ!」

着物の前をはだけられ、
舌でふっくらとした胸の突起をつつかれ、仰け反る。

「そ、そこ・・・ヤッ・・・ァ」
「そんな可愛い声を出して・・・
ここが貴方の気持ちいいとこなんですね?」
「ちが、くっ・・・・アアッ」
「ほら、やっぱりそうですよ?
クリクリしたら、ここ元気になったみたいですし」

両足の間に割り込んだ八戒の中心が、
三蔵の膨らんだ布地に擦り付けられる。

「ああっ・・・・はっか・・い・・」
「優しくしてあげますから・・・怖がらないで。
逃げないでください」

ゆっくりと躰の位置をずらす。

「あの時のように逃げられたら・・・・
僕はもう貴方を追いかける勇気もなくなってしまうから」

申し訳程度にそこにかかる白い布を払い、
誘うそれに顔を埋める。

「ハァ・・アアアアッー!!」

初めてされる行為に、全身が震えた。
肩に担がれた両足は上下に跳ね、
恥ずかしい嬌声を押し殺すことも忘れて溜まらず敷布を握りしめる。
高ぶった熱を冷ましてやるように、フッと息をかけてやると。

「ー・・ヒ、ィッ・・・・」

桜色の幹に涙をこぼし、ピクピクと脈打った。

「は、っ・・・かぃ・・はっかい・・っ!!」

生まれて初めて感じる痺れるような快感に、
三蔵はただわけもなく、彼の名を呼んだ。

「アッ、アッ・・・変ッ・・ーっ・・」

宙に浮く白く艶めかしい脚が、ビクビクと跳ねては引きつっる。

「ヤッメ・・・ッ・・・ヤ、アァ・・・ッ!」

視界が白く染まった。
同時に、強ばっていた躰が無重力の世界に投げ出されたように、
感覚を失う。

「は・・・ぁ・・・・っ・・・」

八戒は口腔に放たれた証をゆっくりと嚥下し、
こぼれた汁を丹念に舐め取った。

「三蔵・・・・愛してます。
二度と、僕から逃げないで・・・」
「あ!?何をっ・・・!?」

濡れそぼった先端の蜜を堅く瞑った蕾に塗られ、
不安に腰を退こうとする。
しかし、しっかりと色の違う手に捕まえられてずらすこともできなかった。

「僕たちが一つになるための・・・大切な儀式ですよ」
「・・・っ・・・儀式・・・・?」
「三蔵、僕と生涯の苦を分かち合えますか?
こんな僕を愛してくれますか?
今なら・・・今ならまだ間に合います、貴方を守ってくれた世界に」

そう、まだ止められる。
このまま、一夜の想い出で終わらせることができる。
けれど、これ以上は・・・・。
止められないのだ、自分も、新しい世界も。

誰も止められなくなる前に、
もしも少しでも不安があるなら、ここで・・・・・

「お前は・・・俺と離れて生きられるのか?」
「・・・・」
「それが、俺の答えだ」
「この儀式は貴方は痛くて辛いかもしれませんよ?」
「構わない。俺は俺の苦痛がお前の痛みだと知っているからな」
「弱み、握られちゃってるんですね、僕」
「覚悟しろよ、こき使ってやるからな」

ペロリと。
悪戯っ子のように舌を出して見せた愛嬌のある仕草に、
八戒は満面に笑顔を浮かべた。
優しい、春風のような笑顔。

「愛してます。僕の全てを貴方に・・・・」

額の聖なる証に口づけ、
八戒は揉みほぐすため、濡れた指先を蕾に挿入した。

「ヒッ、グッ・・ゥ、ヤ・・・・ア、アッ、アアアアッーーー!」

初めての行為に、狭い秘肉は気が遠くなるような痛みを訴えた。
指一本といえど、それは男の指だ。
ゆっくりと粘液の湿り気を借りているとはいえ、
蕾を痛々しいほどに充血させて押し入っていった。

「ヒゥ・・フッ・・・」

直腸の中場近くまで挿入される指。
その存在感に、肺が痛いほど苦しかった。

「八戒っ・・・・抜け、って・・・」
「ダメです。まだ三蔵の気持ちいいところ見つけてないんです」
「良く、なんて・・・」
「あるんですよ」

根元まで突き入れられた指が、クルリと内部を掻き回した。

「アアッ!!」

痛みと得体の知れない感覚。

「ヤッ・・・・変なる・・・・ぅん・・・」

肉壁を押し上げるように指先で引っかかれ、三蔵は緩やかな蝋燭のあかりのなか、
恥ずかしげもなく甘い声を上げ、のたうち回った。
その姿に、八戒は乾いた唇を舐めた。

「すいません、三蔵。僕の方が耐えきれないみたいです」

八戒自身は痛いほどに張りつめ、天を仰いでいる。
見るからに牡の威厳を湛えたそれは、
三蔵を求めて堅く怒張している。

「痛いですけど、少しだけ我慢して下さいね・・・・」

八戒は全てを焼き尽くすような熱い塊を、未だ扉を閉ざした蕾へと押し込んだ。

「ヒッ!?・・・・ッ、・・・ァッ!?」

閉じた瞼の裏側で真っ赤な火花が散った。
全身を駆け抜ける激痛。
喉が焼き付き、訴える声もではしなかった。
しかし、逃げ出したい痛みすら今は確かな楔のようで。
三蔵は全ての最初を八戒に捧げた。

「ぐっ、う・・・・ふ・・・うぅ・・」
「三蔵・・・・・っ、大丈夫ですか?やめましょうか?」

しかし、三蔵は耐えるように唇を噛みしめ、フルフルと首を振った。
その度に金糸が汗で濡れた肌にしっとりと張りつき、
それだけで淫靡な色香を漂わせる。

「つ・・ぅぅ・・」

痛みに零れる涙を熱い舌先が掬う。
楔が打ち込まれた蕾からは真っ赤な牡丹の花びらのような血筋が白い尻肉をつたい、
純血を示す敷布を染めていく。

「三蔵、もう少しですから・・・・」
「いい、・・・・からっ・・・・グッ!」

気にするな、と言いたいのに痛みに言葉が遮られてしまう。

「三蔵・・・・・・」

苦痛に血がにじむほどに噛みしめられた唇を、舌で優しくなぞってやる。
そしてすっかり痛みに萎えてしまった三蔵の牡を、ゆっくりと上下に扱き始めた。

「はぁ・・・・、だ、・・め・・・、あっ・・・」
「力を抜いて下さい。僕の指を意識して・・・・・」
「そ、んなの・・・・・無理っ・・・」
「大丈夫ですよ、ほら・・・下から上に扱いてあげますから・・・・
僕の声聞いていてください」
「アアッ!」

身を乗り出し、耳元に唇を近づける体勢に太い幹がさらに奥へと侵入したため、
引き裂かれる肉の痛みが増していく。

「動かしますよ?・・・下から・・上へ・・・・下から・・・上・・・・」
「ん・・・・・・く・・」
「下・・・・・上・・下・・・、上・・・」
「あ・・・・っ・・・ぁぁ・・・・・は、ん・・・・・」
「イイですか?先っぽが濡れてきましたけど・・・・」
「ばっ・・・か、言うなっ・・・・!」
「だって、ほら。またいっぱい出てきました。
甘いクリームみたいですよ?
ああ、だんだん粘りが増してきた」
「やだっ・・・・って!いぁ・・・・ああっ・・・!」

耳には自分の喘ぎと重なって、八戒の実況中継が羞恥をそそっていた。
瞼はしっかりと閉じられているのに、
言葉に合わせて巧みに動く指先の動き妙にリアルに感じられて、
いつしか後口の痛みが薄れていたようだった。

「それにまるで桜のように可愛い色をしてる。
でもいっぱいヤラシイ汁をだして・・・・
三蔵の躰はこんなにも淫乱だったんですね」
「あっ・・・!そんな・・・」
「いいんですよ、淫乱な三蔵も僕は大好きですから」
「ヤッ!・・・離・・せ、馬鹿野郎!」

淫乱呼ばわりされ、怒りが込み上げてくる。
なんとか首にしがみついていた腕で胸を押しかえそうとした。

「元気なお口ですねぇ・・・・。
じゃあ、こっちのお口もそろそろイイかもしれませんね」

ゆっくりと太い肉塊が内部を出入りし始めると、
合わせたようなリズムで絡めた指が先走りで濡れる牡を強弱をつけて扱いていく。
痛みを忘れた蕾は侵入者を拒むこともせず、肉壁で包み込んだ。

「ん・・・ぁ・・・あっ・・・・ふ」

数秒前の怒りも忘れ酔いしれる吐息を味わうかのように、
八戒は角度を幾度も変えては深く口づけた。
互いに求めあい、絡みつく舌。
乾きを癒すかのように飲み込まれる唾液。
漏れる甘い喘ぎに高ぶる性欲と愛情。

「愛してます・・・・でもっ、言葉だけでは
・・・・っ・・足りないっ!」
「アッ、アア・・・ハァアン・・・ハァッ・・・・!」
「三蔵・・・、僕を見て・・・!」

グイッと堅い楔が最奥まで打ち込まれ、
その衝撃に白い背が激しく弓なりに反り返る。

「アアッ・・・八戒ッ、・・・・八戒っ!」

飲み込まれるような快楽に身を委ね、瑞[い緑の瞳に酔いしれながら、
何度もその名を繰り返す。
呼ぶだけで・・・・自分の深い世界が安らぎに包まれるような、
そんな錯覚さえ起こしてしまいそうな安心感に浸りながら、
三蔵は初めて交わる快楽に意識を失った。



-1ヶ月後-

「おい、客だ。八戒」
「はいはい・・・・あ、八百鼡さん、いらっしゃい。
今日は何でしょう?」

店先で馴染みの客と会話する夫を横目で睨み付けながら、
三蔵はそろそろ閉店の時間と、お金を整理し始める。

三蔵がこの八百屋に嫁いで早1ヶ月。
それまで繁盛している方だったこの店は、
三蔵の見たさに遠方から客が来て、さらに繁盛していた。
経営者としての八戒は、客が三蔵の脅迫を脅迫と思わずかなりの量を買っていってくれるので嬉しい限りだったが、一方でなんとか三蔵に触ろうとする色欲の強い男共から守らなくてはならず、別の忙しさにも目が回りそうだった。
別に守らなくても本人が危険極まりない小銃で我が身を守るので、
特に八戒が身を挺して、ということもないのだが、
そこはやはり夫としての義務と責任と愛情が先立つのか、
妻を見つめる男共の視線が気になって仕方がないのだ。

それでも。

「おい、店閉めるぞ」
「はい、お願いします」

ガラガラ・・・・ガシャンッ!

重いシャッターが重みにつられるように下ろされていく。
立った一枚のそれで、その日の騒音に近い出来事が
一瞬にして消え失せたような静けさが店内を包み込んだ。

「お疲れさまでした、三蔵」
「お前もな」

そっけなく返される返事に、にっこりと微笑んで腰に腕を回せば、
眉をひそめつつも、紫暗の瞳は照れくさそうに目を伏せ、
促すように顎をあげる。
覆い被さるように少し高い位置から交わす口付けは、
三蔵から強請ってきたもので。いつしか閉店後の日課となっていた。

啄むような口付け。

しかし、互いの存在を確認するような、そんな口付けだった。
これが、今日も妻を守れたと安心できる瞬間だった。

「今日の夕食はしゃぶしゃぶ餃子にしようかと思うんですけど」
「肉は嫌だ」
「またそんなこと言って・・・
夜、食べ過ぎちゃうのかなぁ」
「バッ・・!何言ってやがる!!」

耳まで真っ赤に染まった三蔵は、
逃げるように奥の部屋へと駆け込んだ。

「ああ、置いてかないでくださいよ、三蔵」
「煩い!てめえみたいな馬鹿は野菜と一緒に土の中で寝てろ!」
「ひどいなぁ、こんなに愛してるのに」
向けられた背に、八戒はこの生活も、
会話も、何一つ変わることがないように願った。

別にお金が欲しい訳じゃなく、生活のゆとりが欲しいわけでもない。
ただ愛する人が永遠に自分の傍にいて欲しい。
自分がその人の傍にいることを許して欲しい。
ただ、それだけのことが最高の幸せなのだ。

八戒は三蔵が閉めた扉を開けた。
同時に脇にあるスイッチに手を伸ばす。
これを押せばいつもの他愛のない生活が終わる。
そしてこれからは二人きりの時間。

「・・・・また、明日」

眠り始めた狭い店内に囁きかけて。
八戒は闇を背に明るい、暖かな世界へ足を踏み出した。








―了―
「Prastic style」(一時閉鎖)様にてキリ番を踏んだ時のリクエスト品♪
リク内容は、『お初♪』・・・『馴れ初めとお初が大好き』という香月の意見を酌んで下さり、出逢いから初夜まで一気に話を進めて下さったようで(^_^;)。
ちょっぴり総受け風味が漂うのは仕様です(笑)。
かなと様、本当に有難うございました!



「懐かしい!」という方も、「こんなサイトあったんだ」という方も、読んだらぽちっと↑
同志の輪を広げましょう♪